936 インド古典舞踊&音楽ライブ
- 2021/11/08
- 22:44
コロナ渦で2月、4月、8月と流れにながれて、4度目の正直でやっと愉しみにしていたライブを聴きにいけました。
● インド古典舞踊&音楽ライブ 東京都東村山市/ Bresson にて
今回のメインはなんといってもカタックダンスです。
もうずいぶんと昔に一度、足に鈴をつけて激しく舞うカタックを観てはいるのですが、あのときはどなたかの邸宅の落成式の催しで、屋外から屋内を舞台にしつらえて眺めるような一風変わった演出でした。
しかもタイミングが悪く晩秋の氷雨が降り出し、楽器の音もすっかりこもってしまい、けっきょく最後まで観られず放棄してしまいとても残念な経験でした。
ということで、今回は心機一転のカタック観覧です。
● 北インド古典舞踊・カタック; 岡田麻衣子
音楽会の配布物解説より。
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★北インド古典舞踊・カタック★
カタックは北インドの古典舞踊で、インド4大古典舞踊の一つに数えられます。古代インドで「カタカ」と呼ばれる語り部達がヒンドゥ教の神様の物語や抒情詩を音楽、詩、マイムで人々に伝え歩いたのが起源と言われます。この後ペルシャ文化の影響を強く受け、華やかな宮廷舞踊に発展していきます。一節にはフラメンコの源流と言われています。
足にグングルと呼ばれる鈴を50~100個ずつ巻き、鈴音を奏でながらステップを踏んだり、しなやか且つ切れのある動き、高速の回転を駆使して踊ります。最も特徴的なのは音楽に合わせて踊るのではなく、踊りでインド音楽のリズムを“演奏”していくところでしょう。そのためまず“演奏”するためのリズムを覚え、口ずさむことができるようになり、やっと振付に入ります。
音楽との結びつきが非常に強いカタック。上演スタイルは昔ながらの古典音楽演奏家とのライブが中心です。演奏するリズムを紹介し、打楽器(主にタブラ)と共に踊りでそのリズムを奏でます。
● タブラ; 原田康生、サーランギ; 西沢信亮
西沢さんのサーランギ演奏はこれまでも幾度か聴く機会がありましたが。
それも合奏のみのライブで、踊りと併せての演奏を聴くのも今回がはじめてです。
原田さんのタブラは今回で3度目となります。
おなじサーランギをつかう演奏とはいっても、ラーガと舞踊の伴奏とでははまるで異なるようで、その点でも期待度が上がります。
音楽会の配布物解説より。
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★北インド古典音楽★
別名ヒンドゥスターニ音楽とも呼ばれ、ヒンドゥ教とイスラム教文化の融合により13~14世紀にかけて基礎が築かれ、ムガール帝国時代に宮廷音楽として発展してきました。
基本的な編成としては、ドローン演奏楽器によって基準となる音が持続され、旋律奏者がメインとなり、打楽器で伴奏されます。また、ルールを持った即興音楽でありラーガ(時間帯や雰囲気が定められている)と呼ばれる旋律のパターンとターラと呼ばれるリズムパターン(循環する仕組)の組み合わせの中で演奏されます。一曲が1時間程続くこともありますが、曲の流れとしてはまず旋律奏者のソロでラーガを徐々に紹介していくようなところから始まり、打楽器が加わってゆっくりなテンポから段々速くなっていきます。
● グングルの響きと、俊敏な動きに圧倒される。
グングルという足鈴が加わるだけで、踏むというステップ感が何倍にも増幅されていき凄い臨場感です。
会場が2階で木の床ということもあり、そんな偶然なる相乗効果が、踏む動きとともに振動が床からびしびしダイレクトに伝わってきて、体感度が半端でありません。
そして会場の空間上踊る範囲が一周り狭めの設定ということらしく、こじんまりとなってしまった分ぎゃくに目前で踊りを拝見することになりました。
しなやかで優雅な動きに、さらに身を切るような俊速な動きが加わり、その動きにまるで目が追いつけません。
岡田さんはクラッシクバレエ、ジャズダンス、モダンダンス、フラメンコほか様々なジャンルのダンスを経験されてこられたようですが。
カタックの高速回転がなんといっても凄かったです、それはクラッシックバレエの回転をはるかに超える俊速さであり、また回転方向も真逆とのことでした。
回る動作ひとつとっても、じつにさまざまな要素が絡み合って舞踊が成り立つのですね。
クラッシックバレエよりは、インドから世界各地に拡散したジプシーの文化の影響を受けたフラメンコのなかでの回転のほうに、むしろ近いものを感じると話さられていました。
舞踊に圧倒されてしまい音具をチェックするのをすっかり忘れてしまいましたが、グングルを終演後にじっくり見てみたかったです。
このような鳴り物は、なぜかいつも気になってしまうんですよね。
▲ “グングルー” /楽器地球儀HPより▲
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皮ベルトや厚めの布にたくさんの鈴を縫いつけて、踊り手の足首や手首、腰に巻きつけリズムを強調するための楽器。日本の鈴とは少し異なっていて、1センチから3センチほどの大きさで、中が空洞になっている銅と錫の合金の球体の中に、鉄製の小さな玉が2、3個入っている。底の部分は、十文字の切り込みか星の形をした穴があいているのが普通の形だ。インド各地で踊りのために使用されている。インドでもっとも一般的な名前である「グングルー」は、地域によってまったく名称が異なっている。例えばラジャスタン地方ではラムジョールと呼ばれているし、また他の地域ではゲッジャイ、キンキニ、ググラ、パインジャニ、などなど数多い。激しい動きの足首にグングルーをとりつけることで、リズミカルな踊りを更に華麗に強調しているように思える。
● カタックの華やかな動き
● サーランギ 部分
35本以上の共鳴弦を持ち、最も人間の声に近い音色を持つとされるインドの弓奏楽器サーランギ。
主奏弦はガット弦の3本ながらも、糸蔵から複雑に張られた共鳴弦であるスチール弦の多さには毎回ながらすごいと思ってしまいます。
その数ある弦の張力でこんな刳りぬき胴であっても、ながらく使い込んだ古楽器などでは歪みが出てしまうらしいですから、まったく驚いてしまいます。
サーランギも、国や地域によってじつにさまざまなかたちのものがみられます。
おまけのこちらは、そんな楽器の展示を以前みたときのものです。
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● サーランギと運指
主奏弦を押さえるのは指の腹を使うのではなくて、爪の付け根を押し当てて弾きます。
見るからに痛そうな奏法ですが、日々の演奏で爪の付け根がしっかり窪んで硬質化してしまった指先は、この楽器を奏でる者のみに与えられた勲章のように輝いてみえませんか。
サーランギは弓奏楽器としてはとても変わった運指ですが、モンゴルの馬頭琴モリンホールも同じ指使いといいます。
インドの舞踏と音楽ライブ、コロナ渦で長らく燻りながらも待った甲斐がありました。
砂漠で遭遇したオアシスのように、ひさしぶりに潤い満たされた至福のひとときを満喫できました、ありがとうございました。
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