うちのガラクタ

古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。

353 編み袋






机上の整理をしていたら、ぱらりと落ちた一枚のちらし。




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 ● 秩父の工芸品「 すかり・笹かご 」展      埼玉県小鹿野町

期日も既に5月末で終わっています。
きっとちらしの”スカリ” (編み袋)の写真が、家にある編み袋とよく似ていたから、比較用に持ってきちゃったのだなぁ。
会場は、三峰口より更にバスで20分の薬師堂下車。
そっかぁ、両神藥師ってこんな辺鄙な場所にあったのだなぁ。
どちらにせよ、足がなければとても往けないような秩父の山奥です。

ちらしの裏の解説には。

すかり;
 「 秋のお彼岸の頃、9月半ば、山に入イワスゲの葉を採集するところから、すかり作りは始まります。
 その年に新しく出てきた若い葉を摘み、煮て、干し、乾燥させたものを針で裂き、縒り合わせて縄を作ります。
 あとはひたすら縄を綯い続け、綯いながら編むという作業を延々と続ければ、数ヶ月で完成です。
 すかりは元々、炭焼きや農作業のときの弁当を入れるなど、背負い袋としてつかわれてきました。」
 「すかりも笹かごも、一生もんと言われるほど丈夫で材料費もかからないため、昔の秩父地方では各家に1つは必ずあったそうです。
しかし作るのに手間がかかることから、現在ではあまり見る機会がなく、愛好家の方たちが少しずつ伝統を受け継いでいます。」

オカメザサの笹籠はともかく、スカリ作りは、その素材のイワスゲの製縄がとても骨が折れて大変そうです。
それにしても数ヶ月に及ぶ作業とは、ひとつのカゴを作るのにまったくもって頭が下がる労力ながら、一生もんの道具作りならではの、現在ではとても贅沢な時間の費やしかたでしょうか。



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 ● ちらし写真より。

織機のように型枠を用い整経し編んでいます。
この方法ですと、隙間を開けたり詰めたりと調整しながら、いろいろ変化を付けた編み模様が作れそうです。



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 ● 編み袋4種         武蔵野美術大学民俗資料室蔵。

左上; ショイアミ 木綿製     秋田県北仙北郡桧木内
右上; サッカベ  ツヅラカズラ製 福島県いわき市
中段; タス    稲藁製     新潟県中魚沼郡中里村
下段; 編み袋           素材等不詳


下段のデーター不詳の編み袋が、秩父のスカリによく似ています。
負い紐との連結部分(下部)は、やはり強度を要するため、そこだけ理に適った密な編みとなっており、逆ハの字形に展開される編み目模様が美しい。



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 ● 編み袋    幅260×高さ280ミリ。

こちらは”うちの編み袋”、細縄の背負紐がつき、マチ巾がほとんど無いものです。
すっかり燻されて黒ずんでおり、編み目には数種類のパターンが使われています。
もうずいぶん昔に、川越の骨董市で求めたもの、口の紐通しの箇所に一部難があるため、値段は2,000円ほどでした。
スカリだったかサックイだったか、編み袋では確かそんな呼称の民具があったはずと思い、参考用に購入したもの。
店の主人に訊いたら、「秩父あたりの出物」とのことでした。
ということは、このちらしに見る編み袋のように、秩父の”スカリ”と見て間違いないのでしょうか!?
素材は、当初は麻のようなものかと思っていましたが、今回改めて繊維を確認してみると、どうやらそういう訳でもなく、草っぽい素材を綯った縄のようです。
ここで用いるイワスゲの葉材なのかどうなのか、残念ながら素材の詳細はいまだ不詳のままです。
この袋も長らく玄関に下げっぱなしのままでしたから、梅雨入り前のこの季節、ピクニックがてらに、軽く弁当を詰めて持ち歩くのも一考かも知れません。



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 ● 編み袋4種         武蔵野美術大学民俗資料室蔵。

左上; アンツク      沖縄県平良市
右上; アンツク      沖縄県平良市
左下; ピラザヤ      沖縄県平良市
右下; ミンパリアマスク  沖縄県八重山郡竹富町


こちらは沖縄の編み袋。
素材の繊維はいずれも、アダンの気根製。
型枠を用いて編む<カゴ状のタイプ>(上段)と、網を編むような<袋状のタイプ>(下段)の2パターンがみられる。
職人が作る道具というよりは、いずれも、素材の入手と加工に特別のものを要せず、各人が自製する道具である。



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 ● 「 西表島 手わざ帖 1 」より、”アダン”解説。    NPO 西表島エコツーリズム協会。

西表島に移住した知人のナベちゃんが、師匠に習い、島の植物素材を用いた手わざを編纂した冊子。

アダン(タコノキ科)  Pandanus odoratissimus L.f. ;
沿岸沿いや川沿い、マングローブ湿地の後背湿地などに生える、高さ5~6mほどの低木。
雌雄異株で、雄花と雌花が別の株に咲く。
幹からたくさん下がる気根が、まるでタコの足のように見える。
葉にはするどいトゲがあり、葉はトゲを取り草履などに加工。
気根の繊維は籠などの素材となる。

** アダンの気根の呼称であるアダヌシ、アダナシは、「アダンの足」の意。




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 ● 「 西表島 手わざ帖 1 」より、”アンチク”作り。    NPO 西表島エコツーリズム協会。

”アンチクの作り方教えるよ! まずは縄を100mなってきて!!”
アンチク作りに欠かせないのは、縄そのものだけではなく「アダヌシ縄を100mなった『手』」

「自分で採って、自分で加工して、自分でつくる。
受け継ぐべき『手わざ』の最も大切な部分は、この大きな流れの中にあるのではないでしょうか。
 とりどきを見計らってアダン林に分け入り、必要なだけのアダヌシを切り出し、裂いて天候を見ながら干す。
さらに細かく裂き、縄をなう。
この一連の工程を通して、素材との対話の時間は濃く、長くなります。
縄をなったことのない手には作れないものが、100mの縄をなった手からは何の苦もなく生まれてくるかもしれません。
『自分で作ったすてきな作品』だけではなく、『手わざ』をこそ自ら手に入れたい。
『手わざ』は、これからも島とともに生きるために欠かせない技術だと、私たちは信じています。」
                      ・・・・・・・・・本文より。


字意のごとくながらも「手わざ」は”手”によって覚えられ、継承されるもの。
実生活に基づく身体をつかった体験は、理屈ではなくいつまでも身体が覚えてくれる。
改めて、示唆される言葉も多く含蓄のある結びです。
これからも、島での「手わざ」の伝承に益々活躍されることを願って!!



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 ● アンディラ アダンの気根製  沖縄県平良市。    武蔵野美術大学民俗資料室蔵。

こちらのタイプは、型枠を用いず、漁網を編むように絡め編んでいく作りのもの。
海辺での漁りやイモの収穫に用いる。
海人(ウミンチュ)がよく用いるタイプの編み袋で、やはり漁網を繕う編みの技術とどこか通底しているのかも知れない。



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 ● うちの編み袋。   *<色味が乏しく、ぽっかり浮ぶ今日の雲のおまけ付>




ぽろりと落ちた一枚のちらしながら、いろいろ考察できた一時でした。 (^o^)  




  1. 2017/06/02(金) 19:23:33|
  2. 民具
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