うちのガラクタ

古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。

347 ザァルとカンゴ






前回、武蔵村山の里山民家へ向かう途中、青梅街道脇に籠が並んでいる荒物屋に出会いました。




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 ● 籠が並ぶ荒物屋の店先。      東京都東大和市

場所は芋窪付近だったでしょうか、背負籠、木の葉籠、目籠、腰籠、堆肥籠と、いろいろあります。
店先に並んだ籠が珍しいなと見ていたら、店からおかあさん(昭和12年生まれ、80歳)が出てきて、いろいろ教えて下さいました。
おかあさんは隣町の武蔵村山から嫁ぎ、息子の代で4代目、明治からこの地で商いするお店だそう。
それぞれの籠を手にとり、ハチホンビネ、草トリビク、メカゴという名前と用い方、はたまた養蚕が盛やかだった当時の想い出なども語って下さいました。
既にこの近辺でも、カゴ屋の職人が途絶えてひさしく。
ここに並ぶ籠も、隣県の埼玉からの仕入れだそうです。
みなさん高齢化のため、作り手も亡くなり、農家でも世代交代後、これらの籠を昔ながらに使い農事に専じる姿が、ほとんどみられなくなりました。
このような専用の農用籠や製茶・養蚕用の籠以外にも、高度経済成長期以前は、農産物の出荷用の簡易籠(ステカゴ)が大量に消費されており、その供給が間に合わないほど需要が高かったとのことでした。
ステカゴについては、出荷の用途さえクリアーしてしまえば、後は廃棄されてしまう運命にあるため。
写真記録としては見られても、その実物がほとんど現存しないため、一見どうでもいいような簡易籠ながら、実際にはどのような作りだったのか、ついつい興味を覚えてしまいます。
店先で十数分御丁寧な解説、おかあさん、ありがとうございました。


荒物屋の後に寄った、武蔵村山市歴史民俗資料館では、過去の特別展で籠の展覧会が開催されていました。
『ザァル(笊)とカンゴ(籠)』 平成12年(2000年)。
武蔵野のこの辺りも関東独特のなまりがあり、「村山ことば」も近隣と比べ微妙な差違もあり、道具の呼称もなかなかむずかしいものです。

以下、その特別展解説書<白黒写真部分>より、見てみましょう。


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 ● 給餌に使われるヘイザル(上)、「カゴ屋」の店先 瑞穂町(下)

牛舎で用いられている籠は、ツクテ(堆肥)撒きにつかうヘイザル(灰ザル?の転音か)。
東大和の荒物屋でみた堆肥籠<網代底ゴザ目編み>が、これに相当。
カゴ屋写真の手前に積まれているのがその籠。

武蔵村山市内での屋号の聞き取り調査では6軒の「カゴ屋」の屋号の家を確認され、また昭和17年(1942)の「東京竹細工聯合組合規約及組合員名簿」にも4軒の登録がある。
三木には粕屋佐十郎の名があり、跡継ぎの正一が最後の「カゴ屋」として近年(この特別展時、2000年)まで籠作りされていたが、逝去により廃業し、武蔵村山での竹細工が廃絶する。
粕屋正一の製品には、チャザル、チャカゴ、クサトリビク、サツマカゴ、クマデ、野菜を容れるカケナガシ(ステカゴ)、珍しいものでは運動会の大玉転がしの骨にするカゴなどがある。

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 ● 台所まわり、製茶用のカゴ類

碗籠、盛り笊、水嚢、米揚げ、茶篩、茶箕、茶摘み籠。
マンジュウザルは足付、コメアゲザル同様、網代底ゴザ目編みです。

武蔵野のこの辺は麦作地帯のため、祝事にはうどんを打ってご馳走にする習慣がありますが。
盛り笊のマンジュウザルは水団でも盛ったのでしょうか、あるいはそのかたちが円く饅頭のようなことからの名称なのでしょうか。
珍しいのはウドンユデザル(最右列中)でしょうか、大きさが直径一尺半ほどもある深笊で、六ツ目のなかに更に細ヒゴ3本をわたした、詰んだ目となっています。
人寄せのときにでも、大型の羽釜にそのままこの笊を沈め、なかで茹で上がったうどんを一気に掬い揚げるような、そんな使い方をする笊でしょうか?
細部はよく分かりませんが、なかなか凝った作りの籠です。


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 ● 積まれた落ち葉とカゴ(上)、物置に置かれたハチホンビネとイモブルイ(下)

茅葺き屋根の昔の農家の庭先の写真には、小山のような膨大な量の枯れ葉が、堆肥用に集められています。
大型な枯れ葉籠であるハチホンビネに、落ち葉をぎっしり詰め込むと、その重量は60㎏にもなります。
秋になると落葉した雑木林の落ち葉を、この籠にめい一杯詰め込んで運び込み、堆肥作りしました。
納屋に掛かったイモブルイは、底を更に補強するため、ヒゴを一周わしさせています。


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 ● 農作業に使われたカゴ類

穀篩、ジョウゴ、ヘイザル、ハナイレカゴ、箕、御用カゴ、メカイ、カケナガシ(ステカゴ)、芋篩、草取りビク、など。

長柄の付いたハナイレカゴの用途が判然としませんが、種籾など蒔く、播種籠でしょうか?



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 ● ステカゴ

先ほどの荒物屋のおかあさんのはなしにも登場し、気になっていた出荷籠でしたが。
特別展の「農作業に使われたザルやカゴ」の頁にも、よくみるとステカゴが載っていました。

三木のカゴ屋 「粕屋家の製品で特徴的な物は、カケナガシあるいはステカゴと呼ばれる製品で、主に白菜などの野菜の出荷に用いられる簡易籠で。
近隣の市場のほか八王子や横浜方面の経済連にも大量にこの籠を卸していた。
カケナガシの生産、販売は粕屋家が一手に行っており、野菜の出荷にダンボールが使われるようになる昭和30年代前半までは盛んに作られていた。
全盛期には、正一の弟子が3人いたほか、カケナガシの生産は埼玉県尾越町の農家の女性たちに外注していたという。」
とあります。

図版26のカケナガシの寸法は、460×400×高さ250ミリで、野菜などを入れるのに使用とあります。

カラー写真のほうの三種類のステカゴは、それこそなにかのときに捨てられていたものを撮ったもので。
大きさは、図版のものより一回りほど小さいサイズだったように思います。
いずれも、縁は巻かず差し止めただけの簡易なつくりです。
かたちや編み方が微妙にそれぞれ異なっており。
左中のステカゴは、素材がどうやらシノダケのような細竹を半割に割裂したヒゴが使われており、皮付きです。
ほかの2点は、いずれももろい身材(芯材)のみで編まれているようです。
出荷籠などのステカゴは、多くの籠のように大切に使い回わすものではなく、一回こっきりのみ使用の、凄く簡便なつくりの籠です。
大量に数を作ってなんぼの利益のため、極力最低限な素材におさえつつ手早く簡易に仕上げる作業が要求されます。
しかしながら、この最小限度の労力でもって、籠としての用途を最大限(必要な強度を保ち、その場凌ぎとして充分足るようにする)に満たすためには、実に頼りないこのかたちの中に、様々な知恵と工夫の要素が濃縮しているのです。
今回、このステカゴの写真(10年ほど前のもの)は、何のメディアに保存したのだったか探し出すのに随分苦労しましたが、その割りには全体像をメモ的にしか撮っておらず、せめてもう少しディテールを写しておけばよかったと後悔しています。
自分のモノに対する視点や感心も、やはり時とともに徐々に推移し変化しているのを感じさせられます。

ときどきスーパーマーケットの、バックヤードにあるような荷置き場に、整然と積まれたコンテナや、雑然と寄せられたダンボール箱に混じり、時にどこの国からなんの食材の輸送用なのか簡易な木箱や、籠などを見つけると、ついつい近づいて見入ってしまいます。
まだまだ藁や木屑、籾殻、ツメクサなどの簡易な自然素材が、運送用の梱包クッション素材とされていた時代。
現代では、写真などの副次資料で当時を想うことができても、その物通の流れは実際にはどのような感覚だったのか・・・・・・・・・。
海外の国の市場では、昔の日本のようにステカゴなども、現役で活躍している地域もありますし。
ステカゴのようなものを総括的にまとめた資料があれば、結構面白いと思うのですが。
日通のもつ高輪にある「物流博物館」は、古今の物流に関する様々な資料が豊富に展示された素晴らしい博物館ですが、やはりステカゴなどのこの時代の実物資料はどうしても少なく、その点が少々惜しまれます。



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 ● 「草取りビクの工程」   竹細工職人 猪俣民平(大正14年生、東京都瑞穂町)

猪俣民平氏は、軍隊から復員後(昭和21年)に、竹細工職人であった父の助次郎より技術を伝授され職業としてのカゴ屋となる。
主な製品には、ヤマカゴ、ビク、チャカゴ、各種笊類、竹製品。
以前にはジャカゴ(蛇籠)、ジャリミ(砂利箕)、コノメ(養蚕用)なども作られていた。

最初のヒゴ取りの箇所では「ヒネを作る」とあります。 ”ヒゴ”=”ヒネ”なのですね。
当て縁部分は籐巻きです。
瑞穂町の草取りカゴの工程では、仕上げにチカラボネが加えられ、その加工に、コウモリガンナという蝙蝠に似た独特なかたちををした、小型の銑(セン)で削り成形されています。
ヤマカゴというのは、この草取りビクを、そのまま大きくしたようなかたちの背負籠のことでしょうか。 * ”ヤマ”は”雑木林”を示します。
側部に幅広のへぎ材を差し込んだ目塞ぎのつくりで、東大和の荒物屋での写真(左下)にみられる、三つ並んだ背負籠がそれです。



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 ● 草取りビク


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 ● 「草取りビク」    竹製      幅265×240×高さ280ミリ。

こちらの腰籠は3年ほど前、青梅の農協の売店で求めたもの。 青木正夫製作 1450円。
縁巻きは籐蔓で、チカラボネはなし。
上記の瑞穂の草取りビクは、上から覗くと小判型<チカラボネを加えるなど、やはりヤマカゴの技術がそのまま踏襲されているのでしょうか?>をしているようですが、こちらはゆるい三角型となっていて、腰に装着したとき安定し、より”ぶれ”が少ないかたちとなっています。
東大和の荒物屋でみた草取りビクも、チカラボネなしのこの三角型でした。



徒然なるままの籠はなしとなってしまいましたが、当ブログには以下の民具の籠の記事も載せています、併せて参照して頂けましたらと思います。


**ブログ№302 魚籠づくし
http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-302.html


**ブログ№304 背負籠づくし
http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-304.html




籠の世界は面白い。身近にみられる籠についても、まだまだ知らないことばかりです。 (^^)  



  1. 2017/05/13(土) 15:49:41|
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