うちのガラクタ

古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。

337 お手足





 「 みのあだも ほどけて法の 三方山
たが手でゑりし 石のみすがた 」

いつの世も病気快癒は切実なもの。
お世話になっている先生に誘われて、久しぶりの民俗調査<奉納物>に参加しました。(3月末日)


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 ● 「三方石観世音」   福井県三方上中郡若狭町三方

北陸三十三霊場の第七番札所。
本堂には弘法大師の一夜の作と伝わる、聖観世音菩薩が安置されている。
夜明けを告げる鶏の声で彫るのを止めたために右手がなく。
片手観音と呼ばれ、手足の病気や怪我に御利益があるとされる。


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 ● 「三方石観世音」 本堂

天井から多数の奉納提灯が吊り下がっている堂内に、まずは圧巻される。
御本尊は一大花崗岩に刻まれた石観世音菩薩で、30数年度に御開帳されるという秘仏である。
弘法大師一夜の御作にし、桓武天皇延暦年間の草創と伝えられる。
右手首より先を欠いて片手観音で、それ由に手足のさわりや諸病に御霊験杓し、各地からの参詣者の踵が絶えない。
文化年間臥竜院第二十四世春山隣道大和尚の建立、明治33年現在の本堂を再建したもの。


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 ● 本堂御宝前にお供えしている御手足型。

祈願者は、最初御宝前の手足型を借り受け、
朝夕痛むところを「南無大慈悲石観世音菩薩」と唱えながら、軽く「さすって」病の回復を祈願する。
これは先方の信仰心が新しい御手足型に移り、次に借りられる方が早く快方に向かうと云われ。 「お手渡し」と呼ばれる。
快癒後返納の際に、更に新しきものを一本添えて奉納し 、 「願ばらし」する。
「御手足堂」の多数のお手足は、これを積んだもの。
明治と近年の二度の水害で、その多くを流失しながらも、現在残されたその量の夥しさに、その霊験の偉大さを感じさせられる。

写真下のお手足型は、現在授与しているもの。
上半身は手型、下半身は足型を借り受ける。
左右手足の違いを微妙に一本ずつ手作業で作り分けている、このような既製の手足型は、明治期には既に存在している。


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 ● 「御手足堂」 外観

外側の格子枠から、ちらりと覗いた分だけで、いったい内には幾つのお手足が納められているのだろうか。
想像をはるかに超えるその夥しい量に驚かされる。
絵馬は、石観世音の云われともなった、早朝弘法大師に時を告げた鶏の「鶏鳴石」 (左下)を写した図案。


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 ● 「御手足堂」 内観

内部にあるお手足の量は、写真に写る人の大きさから推して下さい。
ともかく凄い量です。
調査としてサンプリングするため、この膨大な量の中から目的のものを選り出す作業は、まさに発掘作業といった感じです。
絵馬額や、実際に使われたであろう松葉杖なんかも納められており、なかなか壮絶な内部です。
中空で睨みを効かす青龍の鱗の一枚一枚も、実は納められた手型より出来ています。
ほとんど「ここ掘れわんわん」状態の作業中、幾度も龍の頭部(鉄板製)にぶつかり痛かった。
スィッチを点けると目玉が光る青龍は、不心得者の侵入をしっかり防いでいたのですね。


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 ● 抽出された手足型。

手足の表現も、具象性の高いものから質朴なものまで実にさまざまです。
板に乳房がついた胸の絵馬もみられます。


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 ● おおまかに系統分類する。

石製の足袋のような足型。
仏師が彫ったような繊細な手型。
素朴ながらも墨でもって自分の掌と甲を描いた手型、掌に生えるまるで毛のような表現は痛みの表出か?
足の甲に付いた指が4本、実際にはそんな付きかたはないのだけど、よりリアルな足を感じさせます。

納められた奉納物は、古いもので天保年間頃のもの。
地名にみられるのは主に若狭や丹後の近在の庄や邑、なかには上方や四国や静岡の地名のものもあったけど。
まだまだ、現代のような交通機関なかった当時は、鄙びたこの地まで詣でることは、いったいどれほどの苦労を要したことでしょうか。


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 ● 「御手足堂」の棚の模様替えをしてみました。

絵馬掛けの上にあったガラス棚のレイアウトを変えてみました。
バックも堂の漆喰の白に合わせてパネル化して、奉納物がシルエット的にくっきり浮かび上がって見えるようになりました。


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 ● やり残しはまだまだ多いけれど。

一週間に亘る悉皆調査ながら、調査できたのは氷山の一角といったところです。
しかしながら膨大な量の奉納物に触れて、あらためて人の願いと、そこから産されるかたちの関係にとても興味を覚えました。
三方湖畔も少しだけ歩けたし、噂の鳥浜貝塚出土のヒョウタン片も観れてなかなか良い一時でした。


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 ● 石観世音に護られて、皆様の病気快癒の御利益あらんことを願います!



「若狭なる三方の海のはま清美み いゆきかえらい見れどあかぬかも」 万葉歌碑 歌人知らず   



  1. 2017/04/03(月) 13:03:16|
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