うちのガラクタ

古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。

283 縄文人の植物利用











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 ● 『 縄文人の植物利用 下宅部遺跡展 』    東京都東村山市 東村山ふるさと歴史館




河川など水場に沿した「低湿地」から出土する遺物は、堆積された泥や砂が保護の役目を果たし、そのままでは自然崩壊してしまう、木部やカゴなどの植物素材が腐らず保存される場合があります。


埼玉県との県境、狭山丘陵の低湿地遺跡・下宅部遺跡からも、河川を利用した加工場があり、木製遺構、木製品と加工途中の半製品、編組製品、漆製品、食用とされた堅果類など、植物にちなんだ遺物が多数出土しています。


1996年から2003年まで6年間の発掘調査と4年の整理作業、その後も継続された最新の理化学分析調査から、近年新たな発見がありました。
前回の『縄文の漆』展に次いで、今回は縄文人と植物のかかわりにスポットをあてた展示です。



ホールには、水場で半加工されていた状態で出土した、長さ6.6メートル(直径元が1メートルほど)のケヤキ材の丸木舟が展示されていました。











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 ● 「木材加工」のコーナー




左上; 30点出土した白木のままの丸木弓、材はイヌガヤで、儀礼用(左)と実用(右)の二種類です。
儀礼用は弓筈(弦をつける部分)の加工は簡易で粗く、弓を生木の状態で意図的に折っています。



右上; クリ、トチノキ、ヤマグワ、カヤ、イヌガヤなど用途に適した樹種の使用の木製品と、その未製品。



下 ; 第3号水場遺構から出土した、長軸1メートルもある大型の脚付き皿と出土状況。
素材は柔らかく加工が容易なトチノキ材。










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 ● ヘアピン     全長96ミリ     東京都指定文化財。




漆塗りのヘアピンは、さらっとした漆と、粘りのある漆で盛り上げて(線幅約1㎜)と、漆の粘性を使い分けた描法が用いられています。









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 ● 漆塗りの木製品など



左上; 彩色用に用いられた、ベンガラ(酸化第二鉄)や朱(水銀朱)の赤色顔料の容器と塗布容器。

中央のドブガイ(淡水貝)を利用した塗布用パレットは、貝本体は崩失してしまったが漆部分が貝のかたちを写し残ったもの。



右上; 黒地に赤漆をのせ模様を出した樹皮製筒型容器と、石器で複雑に削り出し細工した杓子と匙(イヌガヤ材)。



下 ; 漆塗りの弓は、糸や樹皮を丁寧に巻いて漆で塗り固め、強く折れにくく補強しています。
弓を作る材には、イヌガヤ・ニシキギ属(マユミ)・カバノキ属(アズサ)・ムラサキシキブ属・トネリコ属と、どれも粘りと弾力のある樹種が使われています。









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 ● 接着剤や塗料としての漆の活用



左上; 土器の補修跡。
そのまま破損部分を漆で接着したり。補修孔に紐、漆に植物繊維などの混和材を加え練り合わせ塑形剤として破損部を充填整形するなど、いろいろな工夫がみられます。



右上; 黒漆の地に赤漆(ベンガラ)を塗り重ねた注口土器。
塗りは装飾としてのため、外側と目に見える部分の口縁部の内側まで、容器内部は塗られていない。




下 ; 漆による指紋痕がみられる容器











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 ● 編みの原形を留める編組製品の遺物  (* 左上より右へ: 8号、17号、3号、30号、46号、40号)



下宅部遺跡からは、カゴ・筌・筵など49点の編組製品が出土しています。
いずれも当時の編みの形状をよく留める良好な状態なものです。
カゴの編みの技術も現在と同じで、四ツ目、六ツ目、網代、ゴザ目、市松などの種類が確認できます。










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 ● 8号編組製品の復元カゴ    アズマネザサ製




編組製品遺物のコーナーでは、近年の分析法の進歩(「樹種包埋切辺法」、「機動細胞珪酸体」など)で、改たにそのカゴの材質が種の単位でアズマネザサと植物同定された、8号編組製品の新しい復元カゴが展示されていました。
網代四辺底で口縁部が円形で末広がりのカゴです。


実は、以前にもこの8号編組製品の復元カゴを目にしているですが、当時は植物素材の同定がまだ正確にはなされておらず。
素材をクズで復元してみたところ、素材の固さも影響してか、底から口縁部までそのまま立ち上がった四角柱のカゴとしての仕上がりでした。


編組の技術としては同じ編みの復元ではあるのですが、その素材のもつ柔軟さの特性もあるのか、二つを並べてみれば、まるで似ても似つかない姿の別物のカゴとなっています。






今回のカゴの復元では、復元に関しての詳しいパネル展示もなされ、とても興味深く拝見しました。










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 ● 8号編組製品の、復元のための正確な分析図。



編みの種類、ヒゴの厚み・間隔・本数など色分けされ詳細に図示しています。











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 ● 8号編組製品の復元実験、アズマネザサの加工法。



 ① 打撃による分割

アズマネザサの稈(かん)の粗割は、黒曜石などの石器でも可能ですが、打撃を与えると簡単に行うことができます。
打撃によって四分割した稈を開いただけでは4本の素材の繊維が繋がった状態であり(右上)、節が揃っています。
そのままの状態で編まれた30号編組製品が出土しており、打撃による分割法の存在が証明されました。


 ② 剥いでヒゴを製作

四分割した稈を更に開いて叩き八分割。
八分割した稈を0.3~0.5㎜の厚さに剥いでヒゴを作成。
出土した46号編組製品(六ツ目編みカゴ)と現生標本を比較すると
表皮の堅い部分のみを剥いでヒゴにしていることが分かります。
1年ものの若く柔らかいアズマネザサを、刃物を使わず、手で剥ぐことによって0.1㎜単位での微妙な厚さの調整が可能となります。











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 ● 8号編組製品の、編みの部分。 実物標本(右)と複製標本(左) <口縁部・胴部・底部> 




  底部(網代編み):

幅広のヒゴをまぜ、立ち上げの所で裂いて縦材の本数を増やす。



  胴部下部(飛びゴザ目編み→ゴザ目編み)

→ 柔らかな横材で目を詰めて編み上げる。
→ 縦材を3本まとめてゴザ目に変化。
*(3本まとめても目が粗くならないようにすると直径が小さくなり括れた器形になる。)



  胴部上部(ゴザ目編み→巻き付け編み):

→ 別の横材を外側に付加し、2本の横材を螺旋に巻き付けながら縦材に編み込む。
→ 補強が目的だが装飾的な効果を持つ
*(口縁部に向かって徐々に直径が大きくなり、喇叭状に広がる。)



  口縁部(矢筈巻縁):

→ 緻密なしっかりとした縁で仕舞う。






今回の8号編組製品の復元では、出土した複数の編組製品との比較のなかで見えてきたことも多いとおもわれます。




  この復元により、新たな縄文時代のカゴ作りの技法がいくつか明らかになった点は。



 ■ アズマネザサの稈の粗割を叩いて行っていたこと。この技法でなければ、節が揃った素材を得ることができません。(30号編組製品の節が何故揃っていたかの疑問が解明された)


 ■ 底部の立ち上げの所でヒゴを裂いて本数を増やす技法。


 ■ 胴部上部で括れてからラッパ状に開く器形。出土品に忠実な立体的な復元を行わなければ明らかにならなかった。




一見何気なく会場に置かれ見過ごしてしまうようなカゴながら。
ひしゃげてぺったんこになった状態の現品資料より、さまざまな分析と実証のデーターを積み重ね、当時の姿に忠実に立体的に復元されたカゴは、その行程と考察における知悉さに唸らされます。


同時に、縄文の時代からして既に、カゴ類をはじめ身近な植物素材を道具として加工し、余すことなく活用する高度な技術力は、思考と手業が一体となって活きた、縄文人の揺るぎない力強さをかんじさせます。


編組の世界では、昔から現代となんら遜色のない技術が確立されており、素晴らしくかんじさせる瞬間です。










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 ● 縄文人の食べていた食品、マメや鱗茎類の植物遺物。



クリ・クルミ・トチノキ・ドングリなどの堅果類は、秋に大量に収穫して貯蔵することができるので、縄文人の主食と考えらえます。
遺跡よりみつかった、クルミ塚やトチ塚は、可食部分を採るために剥いだ殻や皮をまとめて捨てたものです。


ほかにも、ユリ根のような鱗茎類やヤマイモなどの根茎類、マメなどの様々な植物を食料としていた縄文人です。


鱗茎類やマメは、形が分かる状態で土器に焦げ付いているので、粉砕せずに調理されたようです。


また土器の内側にカゴを設置するものも見られ、蒸し器のように食品を調理したものと考えられています。


食物の実体が残されたマメや鱗茎類より、更なる分析も現在進行中です。


土器にみられた小孔に、新たな技術によるシリコン・ゴムを注入しての「圧痕レプリカ」採集により、マメが人為的に埋められた痕跡(マメの貯蔵容器として祈りを込めた)と判明。(左上)


採集された縄文ダイス・縄文アズキといわれる出土マメは、野生のツルマメ(ダイズの原種、右上)やヤブツルアズキ(アズキの原種、右下)と比較するとサイズも大きく、人為的に野生植物を栽培すると発生する「種子の肥大化」に相当し、縄文人がマメを栽培していたことを示します。


土器底にこびり付いた鱗茎類の炭化痕より、正確な種の同定もなされるように分析技術も進歩しています。




ほかにも、縄文時代の漆掻き痕としては随一出土した貴重な資料、ウルシ製の木杭が展示されていたり。
土木建造の遺構として、タガ留めされた大型のクリの刳り抜き器があったりと。



出土された様々な植物素材の実物資料とともに、発掘調査での出土状況写真、樹種・花・実などの植物写真や実物の植物標本などのパネルとも併せて展示解説がなされ、
同時に、植物の同定方法など最新の分析研究の紹介もあり、
縄文人と植物の利用を明快にかんじることができる、素晴らし企画です。




会期は8月21日(日)まで、土曜・日曜の11時・14時には展示解説(約30分)があります。




また、博物館より少し離れた場所にある、下宅部遺跡出土の遺物を常時収蔵・展示してある「八国山たいけんの里」も、今回の展示の周辺資料が多く観られ。
現在「縄文人の植物利用」に関連した考古と自然のコラボ講座(全6回中、2回分が既終)も開催中です。
丁寧なガイド付きの見学(無料)ができて、こちらの館もおすすめです!
お時間がゆるせば、併せて見学されたらよいとおもいます。








縄文人と植物の関係、なかなか面白い企画です、是非!!  !(^^)!  








  1. 2016/08/08(月) 13:25:37|
  2. 雑 閑
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