うちのガラクタ

古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。

025 ギザギザが決め手! 洗濯板



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 ● 『文化洗濯板』・部分 
 タイヤ・チューブを挟み込んだ製品。鳩の焼印の商標が素敵です。



 三大家事といえば、料理・掃除・洗濯。今回は洗濯板のお話です。洗濯と申しましても、現代ではスィッチひとつで全てが賄える全自動洗濯機全盛の御時世。家の中でも、盥(たらい)に洗濯板を持ち出して、ごしごし擦り洗いすることなど、ほとんど日常から消え去った習慣といえましょうか。家の中に、洗濯板はおろか盥さえも無い場合が圧倒的に多いかと思います。洗濯機は万能ですが、それでも汚れのひどい靴下の踵部分や、シャツの襟首、袖口など。予め、洗濯板でピンポイントでごしごし仮洗いしてから、洗濯機に投入すると、洗濯効果がはるかに向上します。そんな理由で、自分もスーパーで売られていたプラスチック製のミニ洗濯板をいつぞや購入して、時々はそんなやり方を試してはみましたが、如何せん何だか風情がない。同じことは、俎(まないた)でも感じることなのですが。白いプラスチック製の俎は、木製に比べれば食品衛生上清潔で、しかも乾燥も楽で、そこが推奨される由縁なのでしょうが。それでも、どうも木のものに比べ、当たりが・・・まるで良くない。刃物との相性が圧倒的に悪い。別にプラスチック製品を目の敵にするわけではありませんが。木製の定番といえる型の洗濯板を、一時期探しておりました。無機質なプラスチックに比べ、木が持つ特有のあたたかみを期待して・・・。義務的な家事仕事の中に何か心根の面で、僅かにゆとりを見出せればと思いつつ・・・。



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 ● 『文化洗濯板』 「実用新案出願 6379号」、木製、535×270×18ミリ

 以前、いまは無き代官山の同潤会アパートから出た資料に、使い古されギザギザの山部分が半ば風化した洗濯板を見たことがありました。同潤会は関東大震災(大正12年)の復興後より興った、都市集合住宅造営事業です。同潤会アパートの建物は、その当時にして既に、最新鋭である水洗トイレを完備していましたが。やはり洗濯に限っては、この時代の主流は、まだ洗濯機が登場以前の、盥に洗濯板でごしごし洗いに依存していた訳です。それにしても、この風化して、てろてろした洗濯板の風合いは「道具を通り超して、ちょっとしたアートの雰囲気」すら感じさせます。ここまで酷使されて、正に洗濯板冥利。これでは「筆塚」ならぬ「洗濯板塚」に葬らねばならないなぁと思ったほどです。日本人の、「モノの哀れ」(意味が少々異なります?が)、モノに憑く魂を供養する習慣から、大切にしてきたモノの名前をとった『塚』を、社寺など訪れると時々見かけます。しかしながら、これまで『洗濯板塚』というのは見かけたことがありません。明治9年に編纂された『通常物図解便覧』という初等学校教育用簡易器財集の中にも、「盥」<木にて造り、手を洗ひ衣服を澣ぐ具なり>の名前を見つけても、「洗濯板」や「石鹸」は依然見当たりません。また、江戸期の浮世絵や明治初期の古写真にみる洗濯風景にも、盥を用いて揉み洗い後、「張板(はりいた)」に洗い張りしている図柄だけです。「洗濯板」は、これまで日本旧来の、木灰やサイカチの実などの天然成分を主要とした洗濯方法から、新たに油脂をソーダ灰で固めて造った更に強力な洗浄力を持つ「石鹸」の到来に併せて、道具として登場してきたのかも知れません。調べてみますと、『石鹸』のほうは伝来も早く「安土桃山時代に西洋人により伝えられたと推測されている」とあり。国産製造としては、はじめは薬用に、そして化粧石鹸製造の安定に乗るのが、明治10年代の前半以降とありました。また、「銭湯では明治10年代から使用されはじめ、洗濯石けんのことを『洗い石けん』、化粧石鹸のことを『顔石けん』と称していた」ともあります。そして『洗濯板』のほうは「明治中期に日本に伝来。自動洗濯機の出現によりほとんど用いられなくなった」と記されていました。



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 ● 洗濯板   JICA資料館展示・日系移民資料より、2009年。
 アメリカ製の洗濯板。こすりつけて洗う部分がガラスでできている。



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 ● 『昔のドイツの洗濯風景』  台に乗せて、欧州らしく立ち位置での洗濯作業
 * 出典;『明治がらくた博覧会』、林丈二著、晶文社より、P86



 『洗いもの』の文化史を考察して紐解いていくと、現在の最新鋭の家電製品にまで遍く及び、洗い方ひとつとっても国や時代、慣習、経済や科学技術の恩浴がみられ非常に興味深い問題です。 しかしながら、うちの洗濯板。そのデザイン(結構気に入っている)とは裏腹に、『実用新案物』の淋しき性のまま、使い勝手が最悪(一度、風呂場で実験したきり)でした。盆板に代用するにもギザギザ効果が仇花となり、またしても部屋の隅でガラクタと化しております。するなら、先ずは物欲を浄化するべく『心の洗濯』からかも・・・・? 嗚呼 (-_-)。


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 ● 『湖での洗濯風景』  中華人民共和国 雲南省 蘆胡湖にて、1996年4月




  1. 2013/05/30(木) 22:15:17|
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