うちのガラクタ

古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。

331 ニンリーナムナム






今回は馬場で待ち合わせての軽飲み。
「静岡おでん」と餃子にするか、焼き鳥かの二択で行ってみたのが。
ガード沿いの焼鳥屋のほう。


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 ● 「やきとん みつぼ」  高田馬場。

もうずいぶんと昔、『酒場放浪記』で紹介されていて(チェーンのこの店舗とは逆の方向にあった店)、ホル刺盛り合わせが随分良さげで、いつだかほだされ行ってみたら。
TV向けの類さんへのサービスとは雲泥の差で、混んでいないのにオーダーをはぐらかされるわ、後の客の注文より遅れて出されるわで、飲み屋としての基本以前の問題で、とても印象が悪かった覚えがあります。

今回の店舗はそんな些末なトラブルもなく、客入りも満員御礼でとても活気に満ちていました。
瓶ビールで乾杯後、黒霧島のロックと共に、つついてみたのが「生ホル茹で刺盛り合わせ」(シロ、コブクロなどの5種盛り750円)、あん肝ポン酢、モツ煮の三品。
ホル刺は食管法の問題か、火が通りすぎ、可もなく不可もなくといったぼやけた印象。
市場で新鮮なホルモンを仕入れてきて、自分流に絶妙に火を通すのとは勝手が当然違い、これもむべなるかなといった感じです。
なんとなく、飲んでいて厭きてくる雰囲気もあり。
やはり「静岡おでん」より浮気したのがいけなかったのか。
黒霧のお代わりも一杯のみに留め、早々と撤退することにしました。

「おでんの前に小腹でも満たそうか、ラーメン、いやいや油そば。」
「そういえば、怪しげなビルマ料理の店もあるよ。」
「確かに怪しい!」

雑居ビルに混在したミャンマー料理屋、しかもシャン料理ときている。
客は誰もいなかったけど、とりあえず店に入ってみることにしました。


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 ● 「ノング・インレイ」   高田馬場。

高田馬場のミャンマー料理の老舗「ミンガラーバ」へは、かつて幾度か行ったことがあったけど、ミャンマー料理を食べるのなんて、ほんと何年ぶりだろう。
ミャンマー料理は、モヒンガーをはじめ、何を食べても妙に油濃かった覚えがある。
黄、緑、赤の三色旗に白い日の丸、これがどうやらシャン旗らしい。
ミャンマーの旅では、シャンのエリアは訪れたんだっけ。
マンダレーの後に、インレー湖畔の町、ニャウンシュエやタウンジーなどを旅したのだけど。
店名の 「ノング・インレイ」って、ひょっとして”インレー湖”の意味? はて!?

店のメニュー看板には「ミャンマー・シャン民族の料理がメインです。」
ミャンマーでは日本の食品と共通する、納豆や餅、なれ鮨なんかを見た覚えはあるけれど、シャン料理のイメージがまるで掴めない。
「シャン風高菜漬、海老の塩辛、シャン味噌などの発酵食品と、ハーブ・スパイスなどをたくさん使った、ちょっぴりピリ辛な味付けが特徴です。なんと、お豆腐もあります。当店自家製のひよこ豆から手作りしているシャン豆腐、ぜひお試しください。麺類は、お米の麺が代表的。日本人にも食べやすい味付けですよ。」とあります、なるほど。


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 ● なんとも微妙な「今日のおすすめ」メニュー。

「シャン納豆もち米せんべい」、それに中華でもよくあるカエルの料理は、まあよしとしよう。
しかし竹虫、コオロギ、”あり虫(蟻)”は、やはり一般の日本人にはどうみても無理だろう。
かつての東南アジアの旅では、必然的に昆虫食(カミキリの幼虫、カイコの蛹、セミ、タガメなど)も食べたけど。
やはりカメムシは駄目だったし、空港からヤンゴン市内に入った夜、暗闇の中で山盛りにされて売られていたタイワンコオロギは、ゴキブリを連想させてとても不気味だった。
竹虫は、日本の長野県などで食されるハチノコ(クロスズメバチの幼虫)と思えばOKかもしれない。
タイのチェンマイの市場では、これとよく似たイモムシが売られており、食べたことがあった。
アリは、いったいどんな食べ方をするのだろう? 
タイのイサーン(東北地方)やカンボジア辺りではツムギアリの類をスープの出汁(蟻酸を活用)がわりに使っているのをTVでみたことがある。
かなりのイカモノも混ざったメニュー構成ながら、オーダーはやはり普通の食べ物にしました。


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 ● シャンそばと、お茶のサラダで一杯やる。

入口が別の二つの店が、壁の一部を取り去られ、中で繋がっているという不思議な空間。
どことなく微妙にそっけない店内のインテリアが、場末感を際だたせ妙に素敵です。

オリジナルの自家製薬酒(一合、25度、500円。 左中)は、薄めた緑茶のような色をしている。
口残りの芳香が、どことなくバニラ風味な微妙な甘さを感じさせる、上品な味。

お茶のサラダ(右下)というのは、ミャンマーでは食べるお茶の「ラペットゥ」のこと。
茶葉に、小魚の干物や、豆類、刻んだ野菜などを和えて魚醤で味付けしてあり、ミャンマーの旅では随分いろんなヴァリエーションを食べました。
タイでは大型の茶葉を漬け込んで乳酸発酵させた、 「ミェン」という食べる茶がありますが、こちらはミャンマーのようにいろいろ和えて調理するものではなく、茶葉の漬け物自体を食すもの。
味はなんとなく高菜漬けっぽく、口残りの芳香は桜餅の桜葉を思わせる、どこかクマリンっぽい甘い味です。
中国では青茶である「龍井茶」などをそのまま用いた、茶葉料理がありますが。
ミャンマーの食茶文化は茶葉自体を漬け物状に発酵させて調味として用いる点が、ちょっと異なっています。

シャンそばは、タイのクティオのような米麺でした。
スープは複雑な味付けながらも、油っぽくなく意外とあっさり、爽やかな風味です。
自分は汁入り(左下)、知人は汁なし(右中)を注文。

ラペットゥは、ともかく酒請けとしては最適でした。
できることならば、家でのつまみに常備したいものです。
発酵食品文化は、一見似ているようでも、細かな点がいろいろ異なっており、なにかと奥が深い世界です。


最後は、おまけでミャンマーの旅、インレー湖あたりの市場の写真です。



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 ● 朝市のようす。


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 ● 市場にて。

列車の物売り(左上)は、頭の上に商品を載せて頭上運搬している。タージーへの列車にて。
湖畔の水路を行き交う、水上市場(右上)。インレー湖畔。
白い円柱のようなもの(左下)は、タナゴのような小魚(チョーレ)のなれ鮨、 シュエニャウンの市場にて。
乳酸発酵しており、しめ鯖のような味でした。
棹秤で量っているのは紅いニンニク(右下)、日本産と違いとても濃縮された濃い味で、こういった現地の野菜類を用いない限り、本場のミャンマー料理の味の再現は難しいかもしれません。


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 ● YUATHED寺院での会食の卓(上)と、赤い餅(下)。

すっかり忘れていたここでの会食、日記をみると料理の名前も細かく記されていました。

ナッチーン(発酵したご飯)、フッター(豚の煮込み)、ケ・モゥンチョー(揚げ菜)、モンタウ(揚げ菓子)、ペー・シィー(小豆の煮汁)、レヨッティッ・チョ(唐辛子)。
お茶請けとして、発酵した食茶(レッペッ)、ショウガ(チントッ)、揚げ豆(ペースィーチョ)、それにスィーレッ(葉巻)

露店売りの餅は黒米製なのだろうか、小豆を入れたような美しい紫赤色をしている。
赤飯の赤色のルーツは、案外こんなところにあるのかも知れません。
搗きたてで、とてもよくのび柔らかくて喜んで食べていたら、これは油で揚げて菓子にするものだとか。



そうそう、謎の言葉 ”ニンリーナムナム”は、シャン語で「こんにちは」(だったはず?)です!!  (*^_^*) 



  1. 2017/03/12(日) 21:35:02|
  2. 食品
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312 パイヌカジ





パイヌカジ(南の風)。
強者の旅友、シミズ君が石垣島の出稼ぎから戻ってきました。


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 ● お土産は泡盛づくし。


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 ● なんとも強気のラインナップ。

与那国の花酒60度、沖の光、白百合の古酒43度・粗濾過44度など泡盛のオンパレード。
伊豫の栗焼酎は別の知人のお土産です。

小さなショットグラスに5種類ほど順番に並べ、順ぐり試し飲みした結果、お酒はやはり度数が高いものほど美味しいようです。
ラオスの焼酎ラオラオや、ネパールの焼酎ロキシーのごとく、火がつくほど強い沖縄の花酒は本当に久しぶりでしたが最高でした。


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 ● 乾きものだけで朝から二人飲みしたり、本ちゃんの壮行会飲みまで。酒浸しの日々が続きます。

壮行会は、久しぶりフルメンバー集っての酒宴となりました。
若狭のへしこ、百合根、沖縄風豚の角煮といった珍味の持ち寄りもあり、最後はホールケーキに紅茶で終えるというフルな飲み会、まことにお美味しゅうございました。


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 ● 古酒用の保存甕に白百合43度(古酒)を仕込む。

家出オヤジを一週間囲まった結果は、どうやらうちを貯蔵場と勘違いしているのか古酒を仕込んでいく・・・・・・・・奴の姿がそこにあるのだった。


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 ● クバオージ(クバ団扇)   ビロウヤシの葉  石垣島  450×255ミリ。

石垣の南嶋民俗資料館で買ってきたというクバオージ(こんな嵩張る土産も有り難う!)で扇ぎ、パイヌカジ(南の風)を感じる一時。
・・・・・・・・・・・・・・と、
風流を感じさせる瞬間もあったが、最後に思わずどんでん返しの落ちがつき。
心身、胃共々めちゃくちゃ疲れた今回の飲み会であった。

これからスマトラのパダンへ出稼ぎに行くというシミズ君。

パダンといえば、やはり”パダン料理”が真っ先に思い浮かびます。
バイキング料理のように多皿料理が食卓に一堂に並べられ、自分が食べた分だけ細かくダッチ式に精算するというシステム。
そのため、日本の懐石のように多種類の料理を少しずつ一時に味わえるのが嬉しいです。


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 ● ミナンカバウ族の結婚式      インドネシア、スマトラ島 パダン   1992年撮影。

かってのスマトラの旅で、ミナンカバウ族の首都ブキティンギ近郊を実に細かく散策しましたが、小さな集落はどれもが大変素晴らしかった。
パダンはスマトラ南部の一大都市だけど、その記憶はほとんどありません。
写真を探ってみると、どうやら乗り換え地点で通過したと判明。
随一あったのがこの一枚です。
丁度結婚式のパーティーに出会い一枚撮らせて頂きました。
花嫁のゴージャスな頭飾りがなんとも印象的です。



「気を付けて行ってきてや!」シミズ君、仕込んだ古酒の甕は保証できませんが、自分はしばらく胃休めが必要そうなので、当座は夜な夜な悪い小人の被害に遭うことはなさそうです。 (~o~)  



  1. 2016/11/16(水) 13:40:14|
  2. 食品
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275 「世界で一番恐ろしい食べ物」








背表紙を見ただけで、すごいタイトルの図書館本。

毒をもって毒を制す。
表紙を飾る酒瓶のなかには、大きなハサミを持ったサソリが、どっぷりと漬かっています。
それって、結構やばいんじゃないの的な状態。

表紙写真のインパクト。
こういう本って、”見せ物見たさ”の本能をくすぐりダメなんですね。
まんまと、写真のイメージの世界に惹きつけられてしまい、借りてきました。










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 ● 『世界で一番恐ろしい食べ物』   ニール・セッチフィールド著  エクスナレッジ 2013年。









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 ● 掲載のスナップ写真( 著者はどうやらカエルやウナギなどヌルヌル系がダメな模様?)




著者は20年来の旅や、食文化に関する作品が群を抜く、ウェールズ育ちのフォトグラファー。


  あなたの「オエッ!」は「誰かのうまい!」

結局のところ、本書に掲載した食べ物の写真へのリアクションを左右するのは、その人の育った場所や環境ということになるだろう・・・・・・・・食の本来の姿をより開かれた目で見られるようになることを願ってやまない。
                      <本書前文より抜粋>



食べ物の好みは、食品の見かけ、味覚、嗅覚、食感、先入観、習慣や馴れの問題など様々な要素が絡み合って、各人の好き嫌いが分かれ、個人の資質によるところが大きいです。


本書は、料理本とも百科事典とも、見たかんじちょっと違ったカテゴリーの写真本です。

昆虫や海の生物などを6章に分け掲載され。
料理というには、余りにも単純で、加工した食べ物が少なく、素材を単純に焼いたり揚げたりと簡易に調理したものが過半数をしめます。

植物ものも海苔とか納豆以外ほとんどありませんし。

主に食材となる昆虫や動物を、簡易に調理したそのもの、切り出された中身やその部位が食べ物として紹介されています。


日常的にまるで馴染みのない昆虫食や、普段食べない種類の動物は、皮が剥がされ肉片となっている様子に、撮られた写真を見ているだけで、インパクトがあり単純に引いてしまうけれど。
逆に海産物なんかでは、日本人の感覚では、まるで問題視されないような食品も、多く掲載されていています。

これのどこの部分が、いったい”恐ろしい食べ物”にあてはまるのか、やはり欧米人ならではの視点だなぁと、ついステレオタイプに思ってしまうのですが。

そんな点が逆に面白くもあるし、お可笑しくも思えます。


本の出来は、 ”★”ひとつといったところでしょうか。


本国の出版社からは、著者持ち込みで即答GOサインが出たというこの企画。
英国人的なウィットな国民性が汲みとれて、ちょっとおバカで、週刊誌に載るコラム記事のようなお気楽な出来具合、そんなノリが結構面白いです。


ですので、本書の構成の感じは、それほど深く食文化に接してはいません。
ただ本文にもあった、 ”あなたの「オエッ!」は「誰かのうまい!」” の台詞通り
誰もが本書を気軽に手にとり、覗きたくなるコンセプトは十分に成功しているといえます。


昆虫食はできればスルーしたい分野ですし、イカモノ食いも、まったくもって自分の範疇にはありませんが。
それでも自分的には、この本の6割りぐらいの食材は、酒の肴にしてしまえば、へっちゃらでいける(調理次第ながら)のではないかと思います。


食べ物の禁忌やグロテスクに思う度合いなど、その文化によるところ、習慣によるところの影響が、が改めて大きいと感じさせられました。 (^^)  



掲載写真は、どうやら、中国、韓国、東南アジアの屋台を中心にした、庶民的な食べ物が多いいようです。
日本でも、築地市場を訪れて得た食材が、いくらか紹介されていました。

昆虫や怪しげな動物の串刺し写真のほとんどは、どうやら、中国は北京の東華門夜市のものばかりです。
いったいどんな夜市なのでしょうか?
イカモノ食いの屋台が一同に並ぶのでしょうか?
人々が屋台に群れてイカモノ串をむしゃぶる、その様を是非見てみたいものです。

「飛ぶものは飛行機以外、四つ足は机と椅子以外、そして二つ足は両親以外」と・・・・・・・・・。
中国人の止むことを知らない食のバイタリティーを、暗に揶揄する諺があります。


中国の田舎料理の調理法はいたって単調だけど、店で出されるしかるべき料理は驚くほど洗練されていたりもする。実に多面的で謎に満ちた中国。


そして「薬食同源」のお国柄。
どうみてもかなり特殊な、その食材は、ひょっとして薬食の意味が強いのかも知れません。
そして食べれるから食べるのではなくて、彼らはどんなものでも決して妥協せず、調理法共々、きっと美味しく食べる技を探求しつくしているのかも知れません。


気付くと、 「ここまで食うか!?」 (自分もすっかりそのパラダイムにはまっている (^^) )と、次々に写真をめくります。 




著者の履歴には、フォトグラファーとして20年以上にわたって活躍。ミシュラン星付きのレストランのレポート経験もあり、世界の主要都市をほとんど網羅して、なかでも食文化に関する作品は群を抜く、とありますが。

やはり今回の企画は、どこか食材そのもの紹介で、食べ物企画としてはどこか随分貧乏くさい。
でも、その点が逆に粗の魅力を醸し出します。


ちょっとした宴会料理の華ともいえる、和舟の器に豪華に盛った、お頭付きの刺身のお造り「舟盛り」などは、著者の目には一体どんな風に写るのか!? 実に興味あるところです。

絢爛豪華で贅沢で洗練された世界、野蛮でグロテスクで悪趣味の世界、その両者の関係は、食の世界でも表裏一体にありそうで、やはり興味津々です。

次回は是非、世界の豪華食品で構成された、「世界で一番恐ろしい食べ物」版を出してもらいたいものです。





    以下は、雑多ながら本書の6章の写真よりの抜粋です。











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 ● ① 虫たちの奇妙な宴



コオロギ
キョクトウサソリの串刺し <中国>
バッタの串刺し <中国>
ツムギアリ <タイ>
カイコの蛹 <中国>
タケムシ <タイ>
黒蠍の串刺し <中国>



ほかに、
セミの串刺し、ハチの蛹の串刺し、ヤゴの串刺し、ムカデの串刺し、幼虫の串刺し、カミキリムシの串刺し <中国>
ゲンゴロウ、サソリ酒、タランチュラ <カンボジア>
ゴカイ(*ただし掲載写真には、なぜかタウナギらしき魚が掲載されている) <ベトナム>




イナゴの佃煮やハチノコ、ザザムシなど日本でも、幾分なじみの昆虫食は知られていますが。
世界には、さまざまな虫がいて、土地によっては昆虫食は特別な食品とみなされない地域も多いと思います。
昆虫食は、簡易なタンパク源摂取の面でも、人間にとってはその歴史の上でもっとも身近で効率的に得れる食材です。


写真のサソリ以外は、旅のどこかで、食材として売られていたのを目にしているけれど。

ヤンゴンで売られていた、大型のタイワンコオロギは、ぶにゅっと黒く太ったその様は、どこかゴキブリを連想させてしまいダメでした。
子供の頃、多量に採ったエンマコオロギが虫カゴの中で、共食いをしだした惨事もすっかりトラウマになっているように思えます。


アリは、蟻酸の酸味を調味料として効かせた料理が、タイの東北地方(イサーン)やラオスにあります。


同じように調味料としてタイ人が好きなものに、メンダー(匂いが強烈なオスのタゲメのフェロモンを使う)があり。
スーパーでもメンダー味噌などが食材として普通に売られており、持ち帰ったけれど。
こちらのほうはスチロールを溶かしたような、えもいえぬ味が口中に拡がり、食品の素材の持ち味を全て殺してしまうような強烈さ、結局、使用量の調整を計るまでっもなく捨ててしまった、苦い思い出があります。


またタイでは、大型のトノサマバッタやメンダーの素揚げが売られており、肉もカニを食べたような味で、そちらのほうはビールのつまみには結構いけました。


チェンマイの市場で求めたイモムシは、どうやら写真のタケムシのようです。
昆虫食の本には、結構あたりまえに紹介されるイモムシですが、味のほうはまるで記憶に残っていません。


タイの山岳少数民族の村では、カミキリムシの幼虫と思わしきイモムシも食べたけど。
軽く炒っただけの調理法で、表面の皮がぐにゅっとしていて、中からぶにゅっと汁が飛び出す生焼け状態。
食感の気持ち悪さと、虫内に寄生虫などいたらかなりヤバイんじゃないという想いで、心地悪い食感の食べ物として、いまでも記憶に焼きつけられています。

ただ、どうなのだろう、フリッター的にカリッと揚げたら結構いけるのではと思います。


釣具屋へ行けば、サナギ粉として商品でみかけるカイコの蛹ですが。
韓国の慶州へ行く途中に寄った観光地、仏国寺の参道では、路地売りが売るカイコの蛹に韓国の人々が群がっていました。
炭で炒ってあるようで多少はカリッとしているのかなぁ?


以前、長野の楢川村のコンビニで売られていた、レトルトパックのカイコの蛹の佃煮を求め、友達とビールで飲んだことがありますが。
甘辛い醤油味を凌駕するカイコの虫臭さと、それと例の恐るべし、”ぐにゅぶにゅ”食感
トイレ直行として事なきを得たものの、やっぱりダメですね、あのカイコの蛹。
自分にとっての、不味い食べ物ランキングになっている食品です。


そして、時代が時代ならば、まさに女工哀史の世界。
糸ひき賃労の女工さんにとっては、繭の糸ひき後に残るカイコの蛹は貴重なタンパク源だった模様。
女工さんとすれ違ったと際には、その体臭からは、かすかにカイコの蛹の臭いがしたとのはなしも聞きます。



そんな心情も察せず、ある時、韓国土産で知人が勇んで家に持ち込んだのが、サバ缶大のカイコの蛹缶でした。


缶に印刷されているカイコの蛹のイラストが、あまりにリアルでまがまがしく、到来物ということもあって仕方なく、まずはジョークついでにで部屋にしばらく置くことにしました。


時折イラストを眺めては、莫迦だよなぁ~「ふふっ」と鼻であしらいっていたけれど。
やはり中に何が詰まっていると想像しただけで、どうも不気味でいけません。
結局、不幸の手紙よろしく、負のリレーの産物となり果てて。
別の知人宅へ遊びに伺った際に、こっそり置き土産に捨ててきました。

まったくもって人騒がせ、「虫の居所が悪くなる」、そんな罪作りなカイコの蛹缶の顛末なのでした。


いま口にするとどうなのかなぁ、はたして美味いのか、カイコの蛹の味。
カリッとフリッターに調理してみても、やはり、その臭いは相当強烈なのではないか・・・・・・・と思うのですが。いかがなものでしょうか!?











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 ● ② 海の怪物たち  その1



イカ
カメ <ベトナム>
アワビ <韓国>
浮き袋 <タイ>
アンコウの卵 <韓国>
タラの精巣 <日本>










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 ● ② 海の怪物たち  その2


ウニ <中国>
エイ <韓国>
ナマコ <韓国>
ユムシ <韓国>
ホヤ <韓国>



ほかに、
カニの串刺し、ヒトデの串刺し、サンショウウオの串刺し、タツノオトシゴの串刺し、ウミヘビの串刺し、サメ <中国>、
クラゲ 、イカの卵、フカヒレ <タイ>、
マテガイ <シンガポール>、
タコ、コウイカ、ウナギ <韓国>、
海苔、ミルガイ、ツブガイ(*掲載写真はサザエでした) <日本>




写真の、アンモニア臭ばりばりで涙が流れるほどの強烈さ、世界最強と誇るほどに臭い、韓国の祝事のエイ料理は、一度本場で食べてみたい料理のひとつです。


以前放映されたテレビ番組の、 ”世界の臭い物食い特集”では、この韓国のエイが、北欧代表のニシンの缶詰(シュートレミングスでしたっけ?)と共に、世界の臭い食べ物選手権の双璧として紹介されておりました。


番組に登場していた、発酵学者の小泉武夫も、そのあまりの凄まじさに、たじたじとなりのけぞったという代物で。
一度口に含んでしまったが最後、まるで毒ガス攻撃に直撃されたような状況となり、激しく痙攣してのたうち回り、小泉教授のあまりのリアクションの様子は、食品の凄さ以上に笑えたシーンでした。


しかし同じ番組に同席し、一言「美味い!」と、平然と感想を漏らしていた平野レミは、学者先生云々の理屈以前に、食の世界をしっかり味わい極めているようで実に潔く、とても挌好よかった。



欧州のヴンダー・カマー(驚異の部屋)もののなかの蒐集品には、このエイが立ち上がった姿で描かれ、悪魔と化した姿に見立てられたコレクションがあります。


海の生きものは、得体の知れない不気味な姿の生きものも多いですから、海がない国にあっては、異形の対象としてすんなりあてはまったのでしょうね。




ここの章の掲載分で、食していないのは、スッポン、タツノオトシゴ、ウミヘビ、ヒトデ、そしてユムシです。


ここでは紹介はされていませんが、ゴカイやアメフラシの類も、食す習慣があるところもあると聞きます。


カメノテなんかは、食べる身はほとんどないけれど、潮汁にすると、抜群に風味立ち最高ですし。
新鮮な食材を得るには難儀しますが、海鮮品は、はまるとそれなりの美味さで止められなくなるのかもしれません。


腔腸動物である、ナマコやホヤ、ウニなどは、習慣がない国の人が食べ物として認識するには、あまりにも難があるすがたかたちをしています。


マテガイを肴に一杯飲んだときも、貝類のなかでも普段はほとんど食べないもんだったので、しげしげと改めて見なおしてみると、どこか生殖器を連想させ実に珍奇な気分となったものです。


同じように、韓国の釜山のチャガルチ市場では、その豊富な鮮魚の種類に感激していたものの。
洗面器をいっぱいに満たし、ぐにゅぐにゅ絡み合い扇動するユムシのすがたを、一度目にしたときは。
そのあまりのグロさゆえ、これまでの盛り上がっていた市場散策モードが瞬時に霧散して、すっかり凍り付いてしまったものです。


本書のユムシ写真の解説には、”英名はずばり「ペニス・フィッシュ」”と書かれ、”中国や日本の市場でも時おり見られる”ともあります。


日本の市場にねぇ?? かなり特異な食材だと思いますが、本当にあるものなのでしょうか疑問です。




歳とともに自然と味覚も推移していくのか?


自分にとっては、これまで食わず嫌いで、随一苦手で食べれない食べ物のホヤですら、酒の肴として一杯やると、結構美味かったりして、味覚の変化に驚きです。


ホヤはともかく鮮度がいのちの食品で、食すなら産地獲りたて以外にありえないともいわれます。
その美味さは、「海のパイナップル」と、フルーツにも喩えられ崇められたりもします。


学生時代、安い居酒屋で、飲んだ勢いでホヤをうっかり頼み、すっかり悪酔いした苦い経験があります。
「ホヤには迂闊に手を出してはならない」というその教訓も、ここにきてようやく有効期限が過ぎ去ったのか。


先頃の家飲みで、知人が持ち込んだホヤは。
はじめの調理段階からして、外殻に包丁を入れた瞬間、汁が周囲に飛び跳ね、流しが磯臭さで充満し、すっかり萎縮させられましたが。
食べてみると、意外や、実に奥深く微妙な甘味と食感が一体となり、舌の上で心地よく同居し。
酒との組み合わせも完璧で美味くて、参りました。


熱帯地方では果物の王様といわれるドリアン(その強烈な臭いは生ゴミ袋のなかを嗅ぐに相当すると、よく揶揄されます)同様、旬の最高質のものに巡り逢えば。
あなたも「すっかり、その味の魔力の虜になってしまう」という、その気持ちも、今回のホヤ騒動で理解した次第です。


映画「フレンチコネクション」では、主人公の刑事が、海辺でホヤを自ら捕って貪るカットもみられるとか。


ドイツの作家ギュンター・グラスの小説を、フォルカー・シュレンドルフが映画化した「ブリキの太鼓」では、
主人公の少年オスカーの母親が、浜辺から引き上げられた牛首から、にょろにょろ動き出るウナギを大切そうに持ち帰り、台所で調理するというシーンがあります。


ウナギ生態関連の本に記されていた、ヨーロッパで食されるウナギの種類と、その調理法に関してのちょっとした一文より得た情報でしたが、その紹介に沿って改めて映画を注視してみると結構面白かった覚えがあります。


みる人が観れば、実にさまざまな情報を提示する映画の世界。
映画の本筋からは幾分逸脱してしまいますが、食の視点からだけで映画を攻めて観るのも、調理の仕方、食事のマナーの違いなどいろいろ情報が得れて楽しそうだと思います。










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 ● ③ 美味しさ丸ごとめしあがれ



目玉?
ブタの脳みそ <イギリス>
イヌ <ベトナム>
ブタの顔 <タイ>
ヒツジの頭 <イギリス>
ウサギ <イギリス>
ネズミ <ラオス>
ブタの足 <イギリス>
ブタの頭 <イギリス>



ほかに、
ブラッドソーセージ、テンジクネズミ <ペルー>、
ラクダジャーキー 、カンガルーのしっぽ、ブッシュマンズプレート <オーストラリア>、
イヌの串刺し(カレー風味)、ヒツジの陰茎の串刺し、ロバ <中国>、
ウシの頬肉・顔・足・舌・心臓・胃袋、ブタの心臓・鼻・小腸・舌と食道、ヤギの睾丸・頭・足、ヒツジの舌・心臓、野ウサギ、 <イギリス>、
ブタの大腸・胃・子宮・脾臓 <タイ>




さすがに、肉食の歴史が長い欧州のこと、今回の食材では本国イギリスの写真が多いですね。


実家では、せいぜい、特別な肉といっても、北海道ではお馴染みの羊の肉の、マトンやラムのジンギスカンどまり。
肉といえばほかに鶏かブタの精肉でした。
ときどき味噌漬の馬肉も食べましたが、あれはつぶした駄馬の肉だったのか、とても筋っぽく歯が立たないぐらいに固く、そして独特の臭みをもっていて強烈に不味かった。


また、自分の子供のころは、捕鯨措置が執られる以前の時代ということもあり、一番安い肉が鯨で、鯨肉も日常的によく家で食べました。
小学校の給食で出る、鯨の竜田揚げは子供にとっては人気メニューでしたし。
ゴム紐のように細長く、赤身部分が少し混在して、だんだら模様となった、とても脂っ濃い鯨ベーコンなんていうものもありました。


家庭での仕込みには、鯨肉をボウルに浸けて、一晩血抜きするのですが。
その赤い液体にまみれた、血みどろの鯨肉がとてつもなく生臭く不気味で、随分と気色悪かった覚えがあります。


食べ物の場合、環境や習慣がもたらす意味合いは、なんといっても大きいものです。


飲むような歳となって、ようやく中身であるホルモンの部位の、本当の美味さに目覚めた気がします。




日本人が魚をくまなく食すのと同じように、世界の国の多くでは、それぞれ食のタブーもあるけれど、食肉も肝や内臓など含め、無駄なく食すほうが多いのではないかと思います。
同時に、臓器の部分の持つ旨味も心得ており、臭みの抜き方や、塩や胡椒、スパイスでもって味を高める、様々な調理法が存在します。


日本では、やはり宗教的な刷り込みが歴史的にも長らく根を下ろしていたせいか。
過剰な肉食喰らいは、どこか禁忌に触れるイメージがあります。
ことに臓器喰らいには、被差別問題とも通底し、どこか卑野で野蛮なニュアンスがあります。


しかし案外肉のなかでも一番美味な部位が、足が非常に速く捨てざるおえない臓器にあるのかもしれません。


食肉管理の法律上、家畜であっても四つ足動物の屠殺解体には、資格を有した者のみが可能な世界なので。
魚とちがい、捌かれるべき本体が実在してない面があるためか。
切り分けられた部位の肉片の様子で、肉としての違いを薄々認識は出来ても、動物の実体とはどこか直結しない、かけ離れた感じが強いのです。


スーパーに並ぶ食肉は、どれもが均等に細かく切り分けられていて綺麗にパック詰めされて清潔に保たれ、血なまぐささは勿論のこと、ここまで生きものとして育て上げられてきた、命の尊さを感じとる術が一向にありません。


市場で飲み会用に、ホルモンを沢山買ってくると。
仕込みの際のゴミ切りで、ときに臓器のなりたちが、このようになっていたのかと関連づけられ、改めて理解するといった有様です。
臓器の持つ粘膜や、手にまつわるしつこい脂、その獣臭い匂いも、下処理作業がなければ一切知ることもなかった感覚でしょうか。


鮮魚コーナーにある、ぶつ切りにされた魚のアラや、まぐろのメダマなどは、まるで抵抗はないものの。
初めて訪れる海外の市場の精肉コーナーでは。
やはり、皮を剥がされたばかりの動物の姿や、ごろっと無造作に置かれたその生首の奇抜さに、随分と驚かされます。


写真の動物の脳みそやメダマにも、見慣れぬ食材のインパクトがありますし。
魚などと比べると動物自体がより人間に近く、食品というよりは、なんだか惨殺された死体のようにも感じられる、リアルさがあります。


そのせいか魚と違って、動物はメダマが入るだけで、人形のように生々しく精気を帯びてくるから不思議です。
まさしく目がいのち! 鯛の兜煮などでは速攻で、一番美味いとおもわれるメダマの周囲を箸でつつく自分ですが。
動物のメダマの場合は、味的にどうなのか?
それ以前に見かけのグロさが優先され、食手が止むかもしれません。


皮が剥がされ、剥き出しとなった肢体に、ふさふさ毛皮が残されたウサギの頭部。


ベトナムの茶色にこんがりとローストされたイヌの薫製は、細い首の微妙な曲がり具合や、白く剥き出しとなった牙があまりに苦しそうで、やはり見ているだけで十分怖いです。


腸詰めや、薫製などは見慣れてはいても、生き血を固めたブラッド・プディングなどは、やはり最初は幾分抵抗があるかもしれません。


東南アジアでは麺の屋台で、浮き実の具材としても結構登場し、仕上げに軽く茹がかれトッピングされたブラッド・プディングは食感もよく結構好みだったりします。


そして、動物そのものの実体を、ほとんど伴わないドライミートの、厚紙のようにみえるジャーキー類は、味覚の好みはともかく、誰もが難なく受け入れられる食品であると思います。


チベットではヤクの乾し肉、スマトラでは甘辛く煮付けて乾燥させたウシやブタ、ほかにもどうやらイヌらしき乾し肉も食べました。


日本にもツチクジラやイルカの乾し肉があり、幾分魚的な独特の風味がとても美味です。
飲み会の肴にすると、偶然居合わせたカナダ人がその美味さにベタ惚れで、何のジャーキーかと問うから「クジラだよ」と答えたら、「クジラを食べるなんて人として信じられない」と水掛け論に発展してしまい難儀した苦い経験もあります。


イスラム教徒の正しき加工法に依ったハラール食品など、その宗教的信条や禁忌に関わる問題は、ひとまず置いておいても。


食べ物の好みは、その栄養や味以上に、見かけによる好みで大きく左右されるものだと、感じさせられます。


同時に、人体に吸収される栄養源としては、一切遜色ない材料であっても、それぞれの培う文化や社会によっては、食品としては一向に見向きもされないといった側面もあります。


加工の具合がより進み、本来の実体が消え失せ、工業食品に近づけば近づくほど、食としてのタブーとしてのハードルも下げられる傾向にあります。
そんな面を戒めて、ムスリムとしての正しき信条の食生活に誘うために、アラビア語のハラール・マークが印刷された食品も、国間を飛び交うグローバルな輸入食品の増加で、いまでは当たり前のように見かけるようになりました。


食べ物の「味気」を堪能するには、やはり原点ともいえる、生きものとしての”生度”が暗に求められているように思えます。


その点を踏まえ本書を読むと、本当に「世界で一番恐ろしい食べ物」の真偽はともかく、そう感じさせてしまうレトリック感覚が随所にみられ。
そこが本書の扱う”生物(なまもの)”に魅かれてしまう一因であるといえそうです。











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 ● ④ 最高にヘビーな一皿



カエルの素揚げ <カンボジア>
カエルのバーベキュウ <ラオス>
カエルの衣揚げ <カンボジア>
ヘビの干物 <カンボジア>
カエル粥 <ベトナム>
ヘビウィスキー <ベトナム>



ほかに、
ワニジャーキー、乾燥トカゲ <タイ>
カエルの干物 <韓国>
ヘビの串刺し、カエルの脚 <カンボジア>
ヘビの春巻 <ベトナム>
ヘビの皮の串刺し <中国>




著者はどうも、ぬめぬめ系食材が総じて、とてつもなく苦手なようですね。
”ヘビーな一皿”とは、なかなか難しい章題を選んだものです。


たしかに皮を剥がされた直後の食用ガエルなんかは、ぱっと見、処刑された小人さながらに見えてしまいます。


ただ、そこまでクローズアップして奇異なるものと取りあげる感覚が、よく理解できません。
カタツムリやカエルを食すフランス人であったならば、また一風異なった視点の食材が紹介されていたかもしれません。


自分も活きたカエルはかなり苦手なほうですが、それが食品となれば、また別の問題。


長じて、カエルは鶏にくらべて脂も少なく、淡泊で美味で上品な肉質です。


中華膳席で登場した食用ガエルを唐揚げにしたのが、カエル料理と出会った最初でしたが。
アジアの国では、カエルは貴重なタンパク源として盛んに食されています。


日本でも、かっては地方によっては、カエルは馴染みの深い食材だったことと思います。


似たような小動物ながら、ヘビやトカゲの爬虫類系はどうも苦手ですから、今後もやはり、自ら進んで食す行動には出ないことと思います。










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 ● ⑤ 羽の生えたごちそう



スズメの丸揚げ <カンボジア>
ウコッケイ <シンガポール>
ニワトリのトサカ <イギリス>
ニワトリの足 <カンボジア>



ほかに、
生き血のスープ 、アヒルのブラッドプディング、ハト<ベトナム>
ニワトリのブラッドプディング 、アヒルの舌のバーベキュー・内臓・足(骨抜き)<タイ>
ニワトリの砂肝・心臓、スズメの串刺し <中国>
ニワトリの頭 <シンガポール>
エミュージャーキー <オーストラリア>
ヤマシギ <イギリス>




学生になり、上京した時には、まだ近所の居酒屋の品書きにも、スズメ焼きは普通にあったように思います。
全身黒焼き状態で、その痛い気な姿には結構引きましたが、食べてみるとこりこりとしたその食感が心地よかった。
肝心の味のほうはまるで記憶に残っていないけれど、いまあれば是非食べてみたいものです。
スズメ焼きいつから、品書きに消えてしまったのだろう、残念です。


鶏のトサカやモミジ(足)は、ほとんど鶏ガラと同様に湯(出汁)をとる素材扱いでしょうか。


いつだか友達が、アジアの甘辛く煮たモミジのレトルトパックを持ってきて、それで一杯飲ったけど。
骨が多い割りに食べる身が少ないく面倒くさいのと、ぶにょっとしたゼラチン質はコラーゲン豊富なようですが、嗜好に合わずダメでした。
そして足の部分は、よく見ると、どこか爬虫類にも近いゴツさで、その点も箸が進まなかった要因です。


近郊の農家でも、その卵の栄養価から飼育されているのを時々見かけるウコッケイ。
烏黒鶏の字のごとく、白い毛がすっかりむしり取られ漆黒の丸鶏の姿をさらけ出しています。なかなか美味そうです。










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 ● ⑥ 残り物には福がある



バロット(孵化直前のアヒルの卵) <カンボジア>
ピータン <中国>
ハギス(刻んだヒツジの内臓の詰物) <イギリス>
バロット
納豆 <日本>
スターゲイジーパイ <イギリス>



ほかに、
カムジャホットドッグ <韓国>
ツバメの巣のスープ、赤い点心、アヒルの卵の塩漬け <タイ>
ツバメの巣の強壮剤 <カンボジア>
揚げた鳥の巣 <中国>
揚げマーズバー(ヌガー入りチョコレート) <イギリス>




終章の「残りものには福がある」、訳者の意訳による言葉かもしれませんが、イギリスにも同じような諺があるのでしょうか?


ピータンや納豆のどこが、このニュアンスに合致する選択だったのか知れませんが。


スコットランドの郷土料理ハギスは、詩人ロバート・バーンズが一押しの食材で、バーンズの業績と生涯を讃える「バーンズ・ナイト」という祝祭には、バーンズが発表した「ハギスのために」の暗唱が常だったといわれる。
ハギスは「腸詰一族の偉大な王」と表現されるべく、ボリュームも満点でとても美味しそうです。


そして俗悪食品の代名詞的にも時に挙げられる、孵化仕立てのアヒルの卵のバロットです。


何日目の卵がベストの状態なのか頃合いを計るのが難しい食品です。
タイでは幾度も挑戦してみたけど、どれも育ちすぎていたりして、はずしっぱなしで大敗でした。


いつしかバロットへも食手が伸びず、すっかり放棄していたところ、どうにか念願叶い、ベトナムのニャチャンの屋台で食べたバロットで、ようやく大当たりしました。


ひとつの卵にして、完璧なる完成された上品なスープの味。
そして羽根が生えかけたばかりの胎児をぷつぷつと歯で噛み切る、得もいえぬ感触。
同時に、口内に溢れる肉質と軟骨の味、粘膜に包まれたどろりとしたゼリー状の一塊を呑み込む喉越しの嬉しさ。
傍目にはかなりグロテスクなイカモノ食いに写りますが。


ところがどうしたものか、この小さな卵の内に、こんなにも極限まで完成された、食の深淵なる世界が潜んでいようとは驚きです。


卵をひとつの宇宙に喩えるはなしにも合点がいくというものです。


ちなみに、ベトナム人は器用にも、スプーンの背でもって、卵の尖端を円く綺麗に割り、卵の殻自体が完璧な器となった、そこにスプーンをさし入れて、淑々とバロットを食します。


著者撮影のパロットは、どう贔屓目にみても、殻の割り方ひとつとってみても余りにも粗雑で、一向に美味しそうには見えず、写真としても失格のようです。
嗜好の個人差はあるものの、卵内のヒナの具合も幾分育ちすぎているような印象です。


この本のなかで、随一食べたい食材はなにかと問われれば、自分は即答でバロットと答えましょう。


バロット登場で、結果的には終章のお題目「残り物には福がある」に、やっと合致した感じです。 (^^)  




文末の最後には

掲載できなかった食材たち:

アンテロープ、アリの卵、アフリカスイギュウ、セキセイインコ、ネコ、ゾウ、オオコウモリ、ミツツボアリ、ウマ、仔ヒツジの肺、ハツカネズミ、サルの脳みそ、クジャク、ニシツノメドリ、ハイイロリス、シビレ(仔ウシや仔ヒツジの胸腺と膵臓)

とあります。 



国名は敢えて割愛しましたが、古代ローマとなっているものもみられます。


見送った食材のほかに、さまざまなな理由で食べたり撮影できなかったものもあるようですが、「これらの食材は、ぜひ第2弾でお目にかかれっることえを期待したい」との結句に、エールをおくりたく思います。







   最後は、『うちのガラクタ』からの、おまけ写真です。










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 ● コウモリ: ラオス、パクベン。 
   トカゲ : ネパール、カリガンダキ川筋の小村。 
   野ネズミ: タイ、パイ近郊ラフ族の村。



コウモリもときどき食品として売られているのを見ました。
花の蜜を吸うような、大型のオオコウモリはスマトラで、こちらのコウモリ(女性が手にしている)はラオスで。
どういった調理をするものか不詳ですが、羽の部分がキクラゲぽい感じで触感は良いのではと思いました。


村に滞在したとき、夜な夜な鶏を食べる悪い奴、その正体がこのトカゲでした。
尻尾までの長さは115センチほどありました。
即座に解体され、皮は太鼓用に枠張りされ、手足は魔除けの御守りに、余った尻尾と頭は子供のおもちゃとなりました。
肉は、お昼のカレーとなりました、肉質は鶏よりはやはり淡泊だったように思います。


タイのラフ族の村では、敷地に張りめぐらされた竹製の罠で獲ったネズミを食べました。

http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-207.html

毛焼きした後、塩と唐辛子で炒めただけの簡易な料理。
骨っぽくて身はほとんどない感じでした。










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 ● 薬用に薫製された動物? : カンボジア、シェムリアップ。(右上)
   イヌ?         : ラオス、アタプー県。(左上)
   虫売りの少女      : ラオス、アタプー県。(下)



ラオスの市場ではイヌのような小動物が売られていました。


カンボジアの路上の薬売りが、口上しながら人寄せしていた商品には、随分と怪しげなものばかりが並んでいました、なかでも群を抜いて、この薫製が不気味でした、その効力はいかに?


少女が手にしているのが虫の串刺し。
バスが停まると、人であふれ一切身動きができないバスの車内へ向けて、
多量に刺した串刺しを竹の長棹につけて、えいやーと窓へ差し出して商いに精をだす子供たち。


その愛らしい姿を、ひそかに竹竿少女隊と命名しましたが。


よくみるとカメムシじゃありませんか、種類はよくは分かりませんけど茶色で大型の奴。
車内の乗客は、みんな美味しそうに貪っています。


居合わせたお坊さんが気を遣って、一本寄越してくれたけど、やはりカメムシの臭さ(臭いのない種類も多いらしい)のイメージが強力でやはり無理でした。
かわりにセミの串刺しに交換してもらいました。


セミもカメムシも同じ系統の昆虫とはいえ、固定概念が優先された瞬間でした。
セミはいろいろな場所で食べましたが、炒られたものはエビのような味で食感もよく美味でした。




ラオスの市場では、小動物など実にさまざまな、見慣れない食品がならんでいました。
昆虫食だけ注視してみても興味深いものばかりでした。


デジカメがない時代の旅のこと、接写もできず写真として撮られていないのが残念です。






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 ● カエルの鋳物     ブロンズ   全長85ミリ。



食用ガエル、鶏の手羽元ほどのボリュームの肉が得られます。
東南アジアの旅では、カエルも随分食べました。
ケロちゃん供養、誰が直下取りしたものか、フリマで求めたブロンズです。









 「世界で一番恐ろしい食べ物」って何かなぁ・・・・・・・・・・・・・・  (^_^;)  












  1. 2016/06/26(日) 10:55:43|
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250 塩のはなし










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 ● 近頃のスーパーマーケットには、いろいろな塩がみられます。
   つられて、うちの塩も並べてみました。




  図書館の新着にあったのが、 

『日本一の塩屋(まーすやー)が選んだ塩101』 小学館 2015年。 というもの。  

いわば、塩屋の扱う塩のデーターブック。
あるわあるわの様々な塩の種類には、ただただ目を見張るばかりです。

各々の塩の紹介とともに、”味わいデーター”として、塩辛味(ナトリウム)、甘味(カルシウム)、旨味、酸味(カリウム)、苦味(マグネシウム)の五味を五角の表にして。
塩の種類、形状、粒径。水分量、おすすめ料理、おすすめ食材と解説がなされていて、見ているだけであきません。


塩が専売制だったころは数種類しか扱っていなかった商品が、現代ではちょっとした近所のスーパーであっても、日本国内はおろか海外のものを含め海塩、岩塩と、ネーミングやパッケージも豊富に幾種類もの商品がみられます。


90余年の長期に亘る塩の専売制(1905-1997年)が解かれる間際。
食に感心のあるゼミの先輩が、なにかの際に取り上げたのが、伊豆大島で作られる『海の精 あらしお』(上の写真にも載っています)という”塩のはなし”。

当時の、国策としてのイオン交換膜式 (1971年の「塩業近代化臨時措置法」により。海水を電気分解してにがりを一切含まない高純度の塩化ナトリウム塩(99%以上)を効率的に製造。従来の製塩法に比べ、専有面積1万分の1、労力10分の1、生産量7倍という) に危機を抱き。
いち早く研究という目的で、失われた塩田を復活させて(1976年)誕生したのが、塩のにがりに含まれる各成分のほか、マグネシウム、カルシウム、カリウムといった、生命維持に欠かせない成分がたっぷり含まれているという、この自然塩でした。


塩といえば、まだまだ専売公社製の、箱入りや赤いキャップで小瓶入りの「食卓塩」が標準で、味噌、醤油、砂糖に比べ、塩がはるかに安い調味料の代名詞だった時代です。

先輩が篤く語る海の精の自然塩のはなしに或る面共感しながらも、その値段の高さにただただ驚かされた思いがあります。




現在家で普段使いしている塩は沖縄の『シママース』と『モンゴル湖塩』の2種類です。

シママースは塩辛味はあるもののあっさりとした旨味があり調理全般に、モンゴル塩はサラサラとしているので振り塩専用にしています。

「島の真塩(マース)」として300年の歴史を有した島塩は、1972年の本土復帰後、専売法により生産中止を余儀なくされて、その2年後に「シママース」として復活しました。
以降メキシコやオーストラリアの天日塩を沖縄の海水で溶かし平釜で炊いて仕上げる再生加工塩を作っています。

スクガラス(アイゴの稚魚の塩辛)作りに使う塩を、島の従来のものから電解塩に代えたばかりに腐ってしまい、大変な問題が引き起こされているという、当時の週刊誌の記事を読んだことがあります。
塩も水同様に、単に純粋さのみならず微細な成分を含めたバランスが大切で、生体や食品に与える影響がとても大きなものであると知れる報告です。



年末にシママースを切らし店に在庫がなく、廉価だったオーストラリアの天日塩の粗塩を代用してますが、同じように調理に使ってみても、この粗塩はどうも味に締まりがでず深みがなく、些細なことながらも”塩力”の差というものを感じます。



自分のなかでは、海塩は味が締まり煮込みなどに向き、岩塩はまろやかで振り塩に向くという、漠然とした固定観念を持っていましたが。


  この塩の本を読むと、「料理は同化と対比と抑制」としての解説がありました。 


同化; 

同じ味を持つ2種類以上の素材を合わせたとき、相乗効果により、それぞれの味の強さ以上に風味がよくなること。特に甘味や旨味において起きやすい。
 **<出汁の旨味に、旨味のある塩を合わせるとまろやかな味になる。甘味のあるタコに、甘味のある塩を合わせると旨味が増す。>



 対比; 

少量の異なる味わいの素材を加えることで、主たる味が強まる。
 **<小豆を砂糖で煮るときに塩を少量入れると味が引き立つ。>



 制御; 

対比とは逆の考え方。2種類の素材を混ぜ合わせたとき、一方または両方の味が弱まること。
 **<ゴーヤに苦味のある塩を合わせると苦味が緩和される。>





単なる塩ですが、その塩の種類加減ひとつによって自由自在に如何様にも味の調整が可能のようです。


調理学習を受けた方にとっては既知の基本でしょうが、こういったことをまるで知りませんで、納得です。


近頃は100gに満たないような少量パック塩も多くありますので、適材適塩いろいろ塩を換えて試してみるのも面白そうです。








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 ● 『伯方の塩』 粗塩     愛媛県    『日本一の塩屋(まーすやー)が選んだ塩101』より。


遠浅の海岸が続き、雨の少ない瀬戸内海沿岸は日本有数の塩田地帯で、江戸末期には約9割の塩がこの地域で生産される。
当時は干満の差を利用して海水を塩田に取り込む入り浜式塩田が主流だったが、
1953年から竹で編んだ枝条架と、緩やかに傾斜した流下盤で海水を循環させて鹹水(かんすい)を作るようになる(左上・右写真)。
これまでの人力による労働力が減り、効率よく製塩が可能となる。


イオン交換膜製塩に統一する「塩業近代化臨時措置法」(1971年)のなか、瀬戸内海一帯の塩田はすべて取り壊しとなるが。
「自然塩保存運動」により、輸入の天日塩田塩を日本の海水に溶かして再生して原料使用する、使う釜を限定するなどの諸条件のなか、1973年から国からの委託を受けて現代に至る。

メキシコまたはオーストラリアからの輸入天日塩田塩を日本の海水で溶解。ゴミや砂を取り除き、煮詰めて再結晶させ、純チタン乾燥機で数日かけて自然乾燥させる。(左下写真)






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 ● 『粟国の塩』 釜炊き塩   沖縄県粟国島。    『日本一の塩屋(まーすやー)が選んだ塩101』より。 


40年前沖縄県読谷村に土地を借り、理想の塩作りの研究に明け暮れていた。(左上写真)


1995年創業、粟国島の風で鹹水を作り、釜で炊き上げたまろやかな塩。

穴あきブロックを積み上げた立体的塩田タワー。
10mの高さから1万5000本もの竹(枝条架)が逆さに吊されている。
ポンプで汲み上げられた海水は枝条架を循環して水分を蒸発させ、1週間ほどかけて塩分濃度が6~7倍の濃縮海水(鹹水)となる。
海水がしたたる間に風を受け水分が蒸発する仕組み。
穴の大きさや向きなど、風を上手く捉える工夫が施されている。


釜炊きは薪を燃料に、鹹水を30時間かけて煮詰める。
焦がさないように注意しながらの作業は夜通し続く。
炊き上がった塩は脱水層に移し、自然乾燥するのを待つ。









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 ● (左上); 『土佐の海の天日塩あまみ』   高知県
   (左下); 『奥能登上げ浜塩』       石川県
   ( 右 ); 『海女人の藻塩』        広島県
                       『日本一の塩屋(まーすやー)が選んだ塩101』より。




 『土佐の海の天日塩あまみ』; 

木枠に張り巡らされたネットに海水を循環させ、太陽と風の力で鹹水を作る「下流式」の製塩法。ゆっくり結晶させながら、ふんわりした塩に仕上がる。



 『奥能登上げ浜塩』; 

乾燥した砂を木箱に集めて海水を注ぐと、砂に付いた塩の結晶が海水に溶け、木箱の下に鹹水が集まる。鹹水は釜で6時間の荒炊きと18時間の本炊きを経て結晶する。



 『海女人の藻塩』; 

ホンダワラのエキスを抽出した濃縮海水を、平釜で6~8時間煮詰めて結晶化。ホンダワラに含まれる天然の旨味も加わりとてもまろやかでやさしい味わい。
『万葉集』にも記されている「藻塩焼く」は、古くからある製塩法のひとつ。








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 ●  「アフリカの塩」 
(上); 『ビルマ村の塩』   ニジェール。
(下); 『タウデニの岩塩』  マリ。
                    * たばこと塩の博物館(旧展示)より。
 

 『ビルマ村の塩』; 

ビルマ村の塩池にて、砕いた塩を型に入れ成型する家畜用の塩。



 『タウデニの岩塩』; 

干上がったかっての塩湖の底には、岩塩が水平な地層となって堆積していて、それを板状に切り出す。
岩塩の板は、約20日かけてサバクを横断するラクダのキャラバンで、750km先のトンブクツーの街まで運ばれる。








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 ● (左上); 『マラス塩田』     ペルー。
   (右上); 『ウユニ塩湖』     ボリビア。
   ( 下 ); 『ゲランドの塩田』   フランス。
                   『日本一の塩屋(まーすやー)が選んだ塩101』より。 




 『マラス塩田』; 

標高3000mを優に越え高地に3000枚を越える塩田があり、600年も前から天日塩を製塩。
渓谷には高濃度の塩水が湧き出ている。
その塩水を斜面を利用して塩田に引き込み天日乾燥させ結晶させ、笊で掬って山のように積み上げ1ヶ月ほど乾燥させ出荷。



 『ウユニ塩湖』; 

標高3700mのアンデス高原地帯に広がる広大な塩の大地。
雨期になり冠水すると広大な塩湖となる。
塩の収穫は乾期の4月ころからはじまる。
表面にできた数ミリほどの新たな結晶をシャベルで掻き集め、高さ1mほどの山をどんどん作っていき、数日乾燥させたものを工場に運び粉砕して、袋詰めして販売する。
塩は食用のほか、土産物店で販売する民芸品の原料になり、また建材用の塩ブロックとして加工される。



 『ゲランドの塩田』; 


塩職人が伝統的製法で作るコクと旨味のある塩

塩の満ち引きを利用し引き込んでためた海水は、いくつもの濃縮池を通過する間に水分が蒸発し塩分濃度が高まっていく。
最後にオイエと呼ばれる採塩地に流れ込み、結晶する。
風土に根ざしたゲランドの製塩業を長年に担ってきた塩職人たち。
現在、約190名の塩職人が協同組合に参加。
伝統の製法を守り、また次の世代へ受け継ぎながら、自ら主体的に販売する仕組みを作るなど、安定生産に取り組んでいる。








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 ● 「うちの塩」 その1  


  左上より;




 「岩塩」; 

こちらは近年、インド土産に頂いた真っ白な岩塩。
空気に晒しておくと、夏場など湿度の関係で微妙に溶けだし、表面がてろてろになります。
チーズおろしでガリガリやって、焼肉などに直接振りかけると相性が好いようです。


余談ながら、ネパールで初めて岩塩を求めたときは、「あそこの店で”シッディ・ヌン”と言えばわかるよ」と云われよったのが、手漉き紙など諸々の商品を扱っていた街のよろず屋さんでした。
塩の”し”の字も感じられない、食品らしき商品すら扱っていないそんな店先で、主人が抽斗を引き、ごとりと取り出したのが大きな塩の塊り。
量を告げると、その場で塩の塊りを金槌で小分けに砕いて、秤で量り新聞紙に包んで渡してくれました。

岩塩はチベット産。よく見ると白い塊のなかにも微妙にうす桃色の箇所があったりして、光りに透かして眺めているだけで貴石を見るようで綺麗でした。


ごとりと重く、塩辛さのなかにもどこか甘みを感じられる岩塩の塊りを大事に持ち帰り、特別な調理の際に限り、出し惜しみしつつ細かに粉砕して消費したものです。


日本では1997年の塩の自由化前の専売制だった時代。
塩といえば、イオン交換膜法によって塩化ナトリウムを合成してつくられる、まるで雑味(ミネラル成分など)のない格一的な塩味の食卓塩が主流でした。


塩が違うだけで、食べ物の味がまったく異なる、そんないまとなっては当たり前のことが妙に新鮮で、それぞれの土地で使われる塩との未知な出会いが面白く。
しばらくは旅先での自分のお土産として、お茶、手漉き紙、そして塩を新に加え、三品ルールとしていた時期がありました。



 「ヒマラヤのレッドソルト」; 

こちらもお土産に頂きました。
ささっと振りかけるのに効果的な、サラサラのパウダー塩。薄紅色が綺麗です。
ヒングが入っているのか硫黄臭があり、そのまま口に含むと温泉卵を食べてげっぷしたような悲惨な感じになります。
パッケージには”Somaditya Seva Ashram”の文字。
アシュラム御用達とは、これも修行の一環なんですかね?


塩の本のなかにも、『マグマ塩(粉)』(中国チベット自治区)が「約4億年前のチベット高原の天然岩塩」として、この塩とほとんどかわらぬ商品が紹介されていました。
こちらは値段も強気の超高級塩、なんと”1,200円/100g”もします。
焼き鳥ののった長皿の端に仰々しく塩を一つまみ盛って、できる焼き鳥屋風の”ドヤ”写真で決めてありました。


うちでは、単なる温泉卵げっぷ塩の三軍選手で持て余していましたが、この塩の演出にはこの手があったのか!

「チベット高原4億年」のキャッチーな台詞をそのまま頂戴して、塩はあくまで仰々しく高級感を装っての一つまみ盛り・・・・・・! 今度試しに焼き鳥をやってみようっと。


うちに集う飲み仲間はいずれも強者とはいえ、美味と慣れは別なもの、多分、面子の半数は完全に脱落のことと思います・・・・・・・・・。



 「海塩」; 

こちらはネパールのスパイスなど扱う荒物屋(量り売りで土地の人が普段使いしているもの)で求めたもの、インド産の海の塩とのことです。
結晶がまちまちながら、見ていて確かに、塩が正方形に結晶するのがよくわかります。
手をかけず機械的な精製工程がとられていないのか、色もどこかくすんだ色調でどこかばばっちい代物です。
しかし、その分ミネラルも多く残っているのか結構旨味があって、煮込みなどの調理にはなかなか美味で重宝する塩です。
陶製の小型のクロック(タイの搗き鉢)でガリガリやると、サラサラのパウダーになります。


塩の半分はガラス瓶、残りは”テキ”というネパールの蓋器(木製挽物製で、現地でも塩入れにも使用されている)に入れて保管しています。
日本では塩入れといえば陶製の塩壺が定番ですが。
この大粒な結晶塩の場合、現地に倣い木器を使ってみても、調湿作用が優れているので、塩が溶けだすことがなくなかなか具合がよいです。
ただ古道具屋で求めた使い込まれた木器のため、いつまでたっても囲炉裏端で燻された煙り臭さが抜けず、この中に塩を長らく入れておくと自然とシーズニングされてしまいスモーキー・フレーバーの香りが移った塩となります。

容器から塩を取りだし粉砕する一連の動作のなかで感じる燻香が、旅先で見た台所を思い出させ、それに倣った素人のままごと調理に華を咲かせます。



 「インドの塩」; 

いわゆるレッド・ソルトと呼ばれる加工塩。
塩にヒング(アサティフェダ)が溶かされていて、温泉卵のような強烈な硫黄臭があり、整腸作用に秀でます。
ヒングを使う量は本当にごく少量で、塩加減を上手く習熟するまで結構コツがいります。
ヒングはまた、油で野菜類と炒めると相性が抜群で、旨味が増大します。
特に夏場など、胃腸が弱りきって食欲が落ちているときに、量を調整して適量使うと効果があります。
パクチー(コエンドロの葉)などと同じように、初めはその癖のある味に驚かされますが、慣れると結構病みつきになり、これがちょっと入ると入らないではまるで大違いといった不思議な香辛料です。


この塩を使った初めてのカレー作りの際、思い余って一かけの量を投入したばかりに、仕上がりが完璧な温泉カレーとなってしまい、閉口して一口も食べれなかった苦い経験があります。

そんな思いがあだはなとなって、どうもこのレッドソルトは扱いが難しく敬遠しがちです。
普通の塩でカレーを作っておいてヒング・パウダーで微細な仕上がりを調整する調理が定番です。








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 ● 「うちの塩」 その2 


  左上より;




 「ゲランドの塩」; 



天然酵母のパン屋の店先で偶然見つけ、「これが例のゲランドの塩か」と求めたもの。

塩の本にも『セル マランド ゲランド、ゲランドの塩顆粒』として、粗塩を細かくして筒型容器に詰めた塩(一番最初の写真のスーパーの棚の左端に覗く容器のもの)が紹介されていますが。
こちらは結晶体の比較的大きい多少灰色がかった「粗塩(グロ・セル)」です。
水分量が多く、いつまでたってもしっとりしており、コクと旨味がある塩です。


フランス西海岸、ブルターニュ地方にあるゲランドは、古くから製塩業で繁栄してきた地域。
粘土質の土壌を活かした塩田に満潮時に海水を流し込み、わずかな段差を利用して海水を移動させながら、太陽と風の力でゆっくり濃縮・結晶させる製法技術。
その時間の長さがそれだけミネラル成分を多く取り込むことを可能にし、全体の鹹味(かんみ)、苦味、甘みなどが程よく交わって、それがこの塩が美味しく上質とされる由縁です。

19世紀半ば以降、戦争の影響や他塩業産地との販売競争、経済不振などで塩職人が離業して塩田が荒れ地となり、1970年以降進行するリゾート開発計画により、脅かされる伝統製法と塩田消滅の危機を、住民の支援運動で乗り越え、塩職人を守る協同組合を設立させて再生復興させて現代に至ります。

広大な塩田でできた結晶を、職人がすべて手作業で収穫するという伝統的な集塩は、熟練された職人技術が必要で、収穫された塩は塩倉で1~2年寝かせ自然乾燥した後、篩がけして(水洗処理、化学処理は一切せず)出荷します。

製塩の作業のない冬季の浚渫(しゅんせつ)作業にも常に労を要します。
夏の塩田には微少な植物性プランクトン(デュナリヤ・サリナという藻の一種)が発生し、その繁殖により水は赤っぽくなるものの、ミネラル成分をより多く含んだ塩が生まれます。


塩の味も生態系であるプランクトンの抽出成分により毎年微妙に出来が変わるとされます。

塩田の床作りは、塩職人一人一人による腕の見せどころ、 「塩田を自分の妻を愛するように愛せ」と、その管理に常日頃愛情を注ぎ手塩をかけよ、という言葉が代々伝えられています。


収穫される塩には。この粗塩である「グロ・セル」と、
初摘みの「フルールド・セル」(塩の花)と呼ばれる。塩田の水面に最初に浮かぶ小さな結晶で、淡いスミレのような香りとともに、白く味がまろやかな上製品の、2種類があります。


ゲランドの伝統的手法を守った採塩の技術の歴史と、近年の乱開発の波に抗い地域と産業を再興させた人々の歩み。
生命の多様性の宝庫である塩田にみる、食の安全性の示唆、地球規模の環境問題と地域の関わりについての考察は。


『 グランドの塩物語 -未来の生態系のために- 』 コリン・コバヤシ著 岩波新書 2001年 

に詳しく書かれており、塩作りから視る世界に拡がりを覚えさせる良書です。
解説も本書を引用としました。



 「イタリアの岩塩」; 

とても廉価に販売されていた粗粒塩。
あまり旨味は感じません。
パスタの国にあやかって、パスタを茹でるときに鍋に一つまみ投入します。
目下のところその使い方のみなので、まるで減らず困っています。



 「パウダーソルト」; 

卓上ソルトミルがないので、岩塩系の粗粒塩は使う度に乳鉢で粉砕する一手間が、つい面倒になりがちです。
こちらはヒマラヤン・ソルト(岩塩)を超微細なパウダーにした製品。
そのまま砕かずとも簡易に振りかけられる便利ものです。
クセのないシンプルな塩味です。



 「モンゴルの岩塩」; 

お土産で頂いたのですが、まだ開封せずラベルをみて楽しんでいます。
モンゴル語で岩塩は(神様=ジャムッ)+(塩=ダウス)で、ラベルのキリル文字にもジャムッダウス ” ЖАМЦ ДАВС ” と読み取れます。








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 ● 「自製の梅塩」


沖縄の「シママース」をベースに自製した梅塩(うめじお)。
調理に一切手をかけず、白飯をそのまま塩握りにするようなやり方が、塩に潜んだ梅の味を一番素直にたのしめる気がします。
字意のごとくシンプルな「塩梅(あんばい)」のそのままが良い、ですかね!?



今回の塩の本のなかにも、 ”シーズニング”と称し、結晶化した塩にハーブやスパイスをブレンドして風味を加えた製品が多く紹介されていました。
梅塩、藻塩、牡蠣塩、海鞘(ホヤ)塩などと、どこか微妙でほのかな旨味の味を求める渋めな趣向の日本の塩に対して、海外ではハーブをはじめ、トリュフ、レモン、ワイン、樫と桜のチップのスモークなどという塩もあったりと、その発想からしてそのものズバリの華やかさ、塩に求める役割も随分と違っていて面白いです。


ちょっと上品に、”天ぷらに抹茶塩”といった組み合わせは一般的にみられますので、塩と合わせてのシーズニング、薬味的に自由にたのしんでみるのも悪くありませんね。




「塩を舐め酒を飲む」といえば、酒飲みの極みの境地がしますが。 


ネパールのカリガンダキの川筋の小村を訪ねたとき、お酒のもてなしのアテとして塩が出されたことがありました。

シコクビエから造られた、自家製の蒸留酒と共に、小皿に少量の塩が盛られていました。
度数の高い酒に、ぴりりとした塩の味が心地よく舌に残る微妙な甘さがなんとも美味でした。
あとで訊いてみると、塩にトウガラシ粉とトマトの汁をほんの微量足したもので、これもある種のシーズニング効果といえますか。
貧村にあっては客人に対するせめてもの心遣い であったわけです。


カシミールでは、ミルクティーに砂糖の代わりに塩をいれますし、チベット茶では塩入りが定番です。


砂糖の入荷が困難であったなどいろいろ要因もあるのかも知れませんが。
塩入りのお茶も初めは結構戸惑いますが、慣れるととても美味しいものです。
疲れているときは特に、塩入りのお茶を飲むと身体の芯から力が湧くのを感じます。








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 ● 出番に備え待ってます! 


 上写真; 「中馬追いの風俗」   長野県下伊那郡 昭和6年。
       * たばこと塩の博物館(旧展示パネル)より。



製塩された塩は、俵に詰められ馬の背に振り分けられて、交通の不便な山間の僻村までくまなく運ばれていたことがわかります。




生物が生きていくのに必要な生命の源とされる塩は、いまでは労せずとも、必要な時に自由に難なく求めることが可能ですが、つい近年までは塩は金に等しくその管理も含め貴重品であったことと思われます。


世界の各地にかって塩を運んだ、塩の道がみられます。


弥生時代の遺物からも、既に、塩焼き壺なる小さな製塩具が出土しています。


ニューギニアの山地にみる塩作りの映像では、塩分濃度の高い植物を焚いてその灰の中から本当に極微量の塩を得ていました。


山歩きの際、身体から滲みでた汗が粉を吹くと、そんな微細な塩分をどこからか嗅ぎつけたものか、昆虫が舐めに集まります。


食品や医薬品、洗浄や貯蔵といった実用以外にも、塩は、カミへの供え物の神饌として神事に欠かせません。
また、葬式の時に配られる清めの塩や、力士が土俵に撒いたりと、塩には祓いや清めといった、霊力の象徴としての浄化効果が強いです。


イランの魔除けにも岩塩の塊が付いていましたが、湿度の高い日本では自然に溶けて消えてしまいました。
やはりカミが異なればその効力も反古とされるのかも知れません・・・・・・・・・・。




近頃では過剰な塩分摂取がすっかり気になる齢となりましたが、家に余る数ある塩も、手を換え塩を換え徐々に消化していきたいと思います。


思いつくままの”塩のはなし”、またしても脈絡のない長話しとなってしまいました、失礼。





塩辛い話しに最後までお付き合いありがとうございました。 (-_-)  









  1. 2016/01/26(火) 21:15:47|
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118 臭い男







インドから一時帰国している旅友のシミズ君が、昼間から家飲みしましょうということで。気合いを入れて飲み会をきめてみました。





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 ● 上; お子様達の誕生会にて。 ネパールにて 1995年。
   下; 真っ昼間から既に御酩酊。いけませんねシミズ君。




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 ● 飲みの非常に臭い手土産。 「臭豆腐」 中国製。




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 ● ちなみに蓋を開けてみると、こんな状態。見ただけで臭ってきそうですね。



「臭豆腐」というのは、豆腐を発酵させたもの。今回の品は、その中でも最も発酵が進んだタイプのもの。発酵の定義としては「人間にとって有益な腐敗を発酵という」ことですが。今回の品は、蓋を開けるとドブの臭い。これを食品と考えるかどうかは意見の分かれるところでしょうが。まっ、強烈なブルーチーズもどきと考えていただければ間違いないと思います。お酒も繊細なものは負けてしまいますから。焼酎の一気のみで、ますますペースが上がってしまいいけません。

奴と呑むと、24時間体制で臨まなくてはなりません。
朝食は、酒疲れした胃にやさしく!? タイの米麺、クゥティオ・ナムを作ってみました。
ドンブリや蓮華も、東南アジアの屋台で用いられているチープなうつわで合わせてみました。ああ、強烈なパクチー(香菜)が無いのが残念です。






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 ● 朝食はタイの米麺、クゥティオ・ナムで!




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 ● 折角の爽やかな朝食にも「臭豆腐」を入れて、既に爽やかな朝をぶち壊ししている臭い男。それにしても好きですね臭いもの。




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 ● 飲んで、部屋でゴロゴロしているだけでは困ります。折角だからインドのチャイを作ってもらうことにしました。タイの搗き臼で生姜をまずは潰し。CTCのチャイ用の細かい紅茶を煮出します。味はプラス牛乳と砂糖、カルダモンで!決まりです。




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 ● 流石に”チャイ道精神”にあふれ作業姿が板についています。うつわは、ネパールのモダンクラフトのコップにしてみました。


「臭豆腐」の使い方としては、青菜の炒め物に隠し味程度に用いると最高に美味なのですが・・・・・・・。ついつい、お昼もそのまま「臭豆腐」をアテに、白粥としてしまいました。




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 ● 本日のお昼は、白粥で!







ここまでで、既に24時間飲みを超えてしまいました、いやはや人間失格となりそうだ。反省 (-_-;)






  1. 2014/05/20(火) 13:29:15|
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